2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

 フィルム・ダール社と文芸作品−フランス(3)

フィルム・ダール社によって投げかけられた、文芸作品の波は他の会社へも飛び火した。「有名な俳優の出演による有名な主題」を映画化するために、パリではパテ社系列のスカグル社(文学者著作家映画協会、SCAGL)が設立された。ゴーモン社、エクレール…

 フィルム・ダール社と文芸作品−フランス(2)

「ギーズ公の暗殺」は、大衆受けはしなかった。大衆にとっては、劇作家のアンリ・ラヴダンのこともコメディ・フランセーズの役者たちのことも知らなかったのだ。大衆にとっては、作った人や出演者が舞台で有名な劇作家だったり、役者であったりすることに意…

 フィルム・ダール社と文芸作品−フランス(1)

高尚な主題に取り組みことを目的として昨年設立されたフィルム・ダール社が、この年「ギーズ公の暗殺」という文芸作品を世に送り出している。 モンタージュはなく、メリエスの映画と同じ舞台を撮影する方法で撮られた作品だったが、コメディ・フランセーズの…

 エクレール社−フランス

エクレール社では、ヴィクトラン・ジャッセが入社第一作「コルシカ魂」(1908)を製作、続いてアメリカの大衆小説の映画化である「ニック・カーター」シリーズを製作している。名探偵カーターが悪人を退治するという単純な活劇である「ニック・カーター…

 ゴーモン社−フランス

パテ社と並ぶフランスの映画会社であったゴーモン社は、この年1万平方メートルに及ぶ巨大スタジオを完成させ、「世界最大のスタジオ」と喧伝した。 ゴーモン社では、ルイ・フイヤードが筆頭となって演出を担当していた。フイヤードは脚本を書かず、即興で早…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(10)

人気を失ったメリエスの製作する作品の本数は減っていき、やがて破産する。その後、かつてのライバルだったパテ社に誘われて映画を製作するものの復活とはいかず、第一次大戦の勃発も追い討ちをかけて、完全に映画製作から離れていくことになる。 そして、メ…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(9)

現代ならば、マーケティング調査を行い、観客が飽きていることを知り、内容を修正したりするところなのだろうが、メリエスはそうはしなかった。むしろ、自分の作っている作品は優れていて、人々がそれを理解しないと考えていたところもあるようだ。その意味…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(8)

メリエスは徐々に人気を失っていく。その理由は簡単だ。「月世界旅行」から新たなものを生み出すことをしなくなったのだ。1900年代の映画は、今とは異なり、様々な人々が様々な映画の可能性を開花させていった時代だった。たとえば、ロケを行って迫力の…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(7)

トリックにこだわったメリエスが、「物語を語る」という映画の持つもう1つの可能性と融合した作品。それが「月世界旅行」(1902)である。だからこそ、「月世界旅行」は、当時の人々に受けたのだ。一般的に言われているような「世界最初の物語映画」だか…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(6)

メリエスが行ったような奇術的な使い方以外にも、カメラを使って撮影されたフィルムはいろんなことができる。その1つが、物語を語るということだ。映画はこれから先、物語を語るという側面を推し進めていくことになるのだが、メリエスはこの物語を語るとい…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(5)

メリエスが使ったトリックは、カメラを一旦止めることによって、人や物を消しただけではない。カメラには一度撮影したフィルムを巻戻して再び撮影すると、二重で撮影されるという機能がある。この機能に、レンズを真っ黒な紙などで覆って一部分しか撮影しな…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(4)

メリエスは一瞬にして人が消える映画を、カメラの機能を使って撮影した。今から見ると、それはあからさまにどのようにして撮影されたかがわかる。しかし、当時の観客にはカメラの機能なんて知らない。観客には受けて、メリエスは同じタイプの作品を多数製作…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(3)

メリエスといえばトリック映画だ。だが、メリエスは決してトリック映画の発見者ではない。トリック映画にこだわったという意味において、「メリエスといえばトリック映画」となったのだ。 メリエスは映画製作の最初の最初からトリック映画を製作したわけでは…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(2)

メリエスはなぜ映画を見世物と向かわせることができたのであろう?その理由を考える上で、忘れてはいけない点が1点ある。それは、メリエスが元々は奇術師だったという点だ。 リュミエール兄弟がカメラ機械の開発・販売という堅気の仕事の延長線上で映画の世…

 ジョルジュ・メリエス−映画を見世物に向かわせた男(1)

ジョルジュ・サドゥールは「月世界旅行」を評して次のように書いている。「この映画が成功したのは何といっても完璧に調和しあい、想像力が横溢している衣装と舞台装置を創りだしたことにある」(世界映画全史vol.3) メリエスの作品は、舞台をそのまま映し…

 ジョルジュ・メリエス作品集(17)

「Good Glue Sticks」(1907) 2人の警官に邪魔された露天商が、2人の警官の制服の袖を接着剤でくっつけてしまう。怒った警官は、露天商のズボンの尻に接着剤をつけてドアに貼り付ける。 メリエスのトレードマークである映像トリックがこの作品では使…

 ジョルジュ・メリエス作品集(16)

「The Eclipse」(1907) 1人の学者が生徒たちに日食について説明している。日食の時間が来て、学者や生徒たちは日食の様子や他の星たちを眺める。興奮しすぎた学者は、窓から落ちてしまい、生徒たちが学者を介抱する。 9分というメリエスの作品にして…

 ジョルジュ・メリエス作品集(15)

「The Black Imp」(1905) 宿にやってきた男が、いつのまにか移動するタンスや、増殖する椅子などに驚く。犯人の悪魔と追いかけっこになるが、最後にはボヤ騒ぎまで起こしてしまい、宿主から追い出されてしまう。 ポルターガイスト的な展開に、現在のホ…

 ジョルジュ・メリエス作品集(14)

「The Wonderful Living Fan」(1904) 巨大な扇が開き、合図によって女性へと変わる。 メリエスが得意としたストップモーションを使ったトリックが使われた作品。女性を前面に出すことでセックス・アピールを生み出している。もちろん、当時の基準での…

 ジョルジュ・メリエス作品集(13)

「中国の魔法使い(Tchin-Chao: The Chinese Conjurer)」(1904) 奇妙な中国人が傘の中から色々な物を出現させる。提灯を犬に変えたり女に変えたり、オーヴァーラップ合成で瞬間移動を見せたりする。 中国の扮装をする理由はまったくない。人物の瞬間…

 ジョルジュ・メリエス作品集(12)

「化粧の王様(Untamable Whiskers)」(1904) メリエスが描く数々の顔の絵に、彼自身がオーヴァーラップで変化していくというトリックを使用した作品。 安易といえば安易にも感じられる作品だが、メリエスの絵がうまいことが印象に残る。また、変身し…

 ジョルジュ・メリエス作品集(11)

「飲んだくれのポスター(The Hilarious Posters)」(1905) 壁に張ったポスターが突然動き出して通りがかりの警官を驚かせる。 トリックとしては、絵で描かれたポスターが突然実際の人間に変わるところの切り替わりと、実際の人間に替わったポスターの…

 ジョルジュ・メリエス作品集(10)

「生きているトランプ(The Living Playing Cards)」(1904) メリエス演じる手品師が大きな板を持ってくる。トランプをかざすと次々に板がカードの柄に変化する。クイーンの札から女王を出したりキングの札から王を出したりする。 どこか優雅な感じが…

 ジョルジュ・メリエス作品集(9)

「秘密の賭博場(The Scheming Gambler's Paradise)」(1905) 秘密の賭博場でギャンブルに興じる人々。警察が来ると一瞬で縫製工場へ変わる。ついに警察に踏み込まれるが、急いでギャンブルに興じていた人々は逃げ出し、残された警官たちはギャンブル…

 ジョルジュ・メリエス作品集(8)

「不可能な世界への旅行」(1904)「月世界旅行」(1902)の延長線上にある作品とも、焼き直しとも言える。 月の代わりに今度は太陽に行く人々の姿を描いている。使われている技法も、カメラを1回止めて行う入れ替わりのトリックや、二重写しなど変…

 ジョルジュ・メリエス作品集(7)

「地獄の鍋」(1903) 舞台は地獄。メリエスの作品には地獄を舞台にしたものが多い。女性を次々と鍋の中に放り込んで殺していく悪魔。3人の女性が鍋に放り込まれた後、鎌から3つのゴーストが現れ、悪魔を追い詰めていく。 悪魔がゴーストに怯えるとい…

 ジョルジュ・メリエス作品集(6)

「音楽狂」(1903年) 原題「LE MELOMANE」 英語題「THE MELOMANIAC」 音楽の先生が電信柱から張り巡らされた5本の電線を発見。自分の頭を電線に投げて音符にする。ゴッド・セイヴ・ザ・キング(国王陛下万歳)の歌曲で構成されているという。 メリエスの映…

 ジョルジュ・メリエス作品集(5)

「地獄のケーキ・ウォーク踊り」(1903年) 「ケーキ・ウォーク踊り」とは、ミュージックホールの演目として、当時フランスで大流行した踊り。元来、黒人奴隷が主人の為に焼いたケーキを運ぶ様からヒントを得てそれが変化して出来上がった踊りのこと。 …

 ジョルジュ・メリエス作品集(4)

「青ひげ」(1901) 7人の妻を次々と殺害していた王様の元に、8人目の妻がやってくる。王様は、妻にある部屋の鍵を渡すも、決してその部屋には入ってはいけないと言い残し、出かけていく。誘惑に抗しきれない妻が部屋を開けるとそこには7人の妻の死体…

 ジョルジュ・メリエス作品集(3)

「ゴム頭の男」(1901) ジョルジュ・メリエス演じる主人公が、首を取り出して(この首もまたメリエスなのだが)テーブルの上に置く。その首にフイゴで空気を送り込むと首がどんどん膨らんでいく。最後には、膨らみすぎた首が破裂してしまう。 生きている…