映画評「空中結婚」

製作国アメリカ 原題「THE BALLOONATIC」
バスター・キートン・プロダクション製作 アソシエイテッド・ファースト・ナショナル・ピクチャーズ配給
監督・脚本・出演バスター・キートン 監督・脚本エドワード・F・クライン 製作ジョセフ・M・シェンク 撮影エルジン・レスレー
出演フィリス・ヘイヴァー、ベーブ・ロンドン

 気球にワッペンをつけているのを手伝っていたところ、いつの間にか気球が飛び上がっていたことに気づいたバスターは、孤立した島のような場所に不時着する。そこで、バスターは川で魚釣りをしたり、猟をしたりするうちに、同じようにアウトドア生活を送っている1人の女性に出会う。

 車や汽車といった乗り物をコメディの道具として使いこなすキートンは、「空中結婚」では気球に挑んでいる。といっても、キートンが気球の上に乗ったまま気球が飛び上がってしまうというギャグのシーンは、さすがに自らがスタントをこなすわけにもいかなかったようで、ショットを割って表現されている。

 自然が溢れる場所へ行ってからのギャグは、キートンのスタントというよりもアイデアで見せるものとなっている。例えば、釣りがうまくいかないバスターが石を積んで川をせき止め、水が少なくなったところを素手で魚を捕まえるというギャグ。また例えば、チャールズ・チャップリンが「黄金狂時代」(1925)で同じギャグを披露した、猟をしようと歩いているキートンの後ろからついてきている熊に気づかず、前に現れた熊に怯えるといったギャグ。このギャグは、キートンが前に現れた熊をライフルの台尻で殴り倒すと同時に銃が暴発し、後ろにいた熊も倒すというギャグにもつながっている。

 アイデアによるギャグは、最後の最後がもっとも冴えている。偶然出会った女性と恋に落ちたキートンらは、カヌーで揺られながらいちゃついている。しかし、映画を見る者にはその先には滝があることを見せられる。だが、キートンたちは気づかない。いったいどうなる?と思っていたら、カヌーは滝に落ちずにそのまま空を飛んでいく。カヌーには気球がつけられていたというオチ。D・W・グリフィスの「東への道」(1920)を茶化したかのようなこのオチは、なかなか秀逸だ。

 キートンのアクロバットはあまり見られないが、アイデアが冴えた作品だ。

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