映画評「チャーリー・チェイスのキツネ狂い」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]CRAZY LIKE A FOX  [製作]ハル・ローチ・ステュディオズ  [配給]パテ・エクスチェンジ

[監督]レオ・マッケリー  [製作]ハル・ローチ  [撮影]レン・パワース  [編集]リチャード・C・キュリアー

[出演]チャーリー・チェイス、ウィリアム・V・モング

 親が決めた結婚相手の顔も知らないウィルソンは、初めて結婚相手に会いに行く途中で1人の女性に会い、恋に落ちる。ウィルソンは結婚相手に嫌われるため、奇行をして頭がおかしくなったフリをするが・・・。

 チャーリー・チェイスの作品は、この頃から快調さを増したようで、「キツネ狂い」のオープニングには堂々と「チャーリー・チェイス」の文字がタイトルと同じくらいの大きさで表示されている。そして、「キツネ狂い」は、そうした扱いに十分に応える快作だ。

 チャーリーが演じるウィルソンの奇行の数々に加え、「笛を吹くと元に戻る」という設定の面白さ。ウィルソンの奇行に怯えたり、怒ったりする周りの人々の反応。そして、ようやく混沌が収束に向かい始めた時、医者から「こちらもおかしくなったフリをするしかない」とアドバイスされた結婚相手の父親も奇行を始め、今度は父親を収めるために奇行に付き合うウィルソン。そして混沌が加速度を増し、奇行を始めた自らの夫に対してつぶやく結婚相手の母親の「結婚した時からおかしいと思ったのよ」の一言!

 スラップスティック一辺倒のサイレント期のコメディの中で、シチュエーションの面白さへの転換を図ったのがチェイスの最大の功績なのだろう。もちろん、この後トーキーでもシチュエーションの面白さ満載の映画を監督するレオ・マッケリーの功績もあるだろうと思う。

 傑作だと思う。サイレント映画ならではのセリフに頼らないギャグは、設定の面白さによって掛け算で面白くなっているように感じる。正直、ここまでに作られたチャーリー・チェイスの作品を見ても、なぜチェイスに人気があったのか今ひとつ分からなかった。だが、今は分かる。チェイス自身だけが人気があったわけではなく、チェイスの映画が魅力的なのだ。