「チャング」 秘境見世物映画の代表作

 後に「キング・コング」(1933)を監督するメリアン・C・クーパーとアーネスト・ショードサックは、タイ北方のラオスのジャングルで生きるクルー一家の物語である「チャング」(1927)を監督している。

 パラマウントが製作した作品で、プロデューサーのジェシー・L・ラスキーが潤沢な資金を提供して、2人を東南アジアにクーパーとショードサックを派遣して撮影が行われた。

 虎や豹、大蛇などの猛獣との対決が撮影され、木の上の村人を襲う虎を撮った文字通りの決死の撮影も行われた。さらには、象(「チャング」は象の意味)のスタンピートによって村が完膚なきまでに破壊される様子も撮影された。この象は破壊された村を再建するために、捕らえて飼いならし、労役に使われたという。

 一方で、完全なドキュメンタリー映画ではなかった。アクションシーンのほとんどは演出され、再構成されたのだという。だが、象が村を破壊するシーンは実際に起こった出来事を撮影したと言われる。

 ロケだったため、B級映画の2日分の費用で撮影が行われた。「チャング」は大ヒットし、さらには、第一回のアカデミー賞の「独創的で芸術的な作品賞」にノミネートされた。