文字 の検索結果:

映画評「キートンの恋愛三代記」

…バラ(一部ではなく、文字通り全体がバラバラ)になるというアッと驚くギャグから始まる。圧巻は、キートンがビルの屋上から隣のビルの屋上へと飛び移ろうとするが、失敗して落下。だが、窓につけられた布製の屋根のおかげで助かるというアクロバット。 このアクロバットにはキートン映画の真髄があるように思える。現在の映画なら、カットを割って、大げさな音楽と叫び声が加わり、時間をかけてみせるところを、キートンはさらりと数秒の出来事として見せてしまう。キートンはどんな状況に陥っても、どんなにすごい…

映画評「ホワイト・ローズ」

…ル・ホーソーンの「緋文字」に、「東への道」(1920)をプラスしたようだ。グリフィスの世界観が凝縮された内容である。人間は清く正しく生きなければならない。だが誰にも失敗はあるので、寛容でなければならない。「イントレランス」以後のグリフィスの作品には多かれ少なかれ、そうしたメッセージが込められている。その意味で、「ホワイト・ローズ」は、まさにグリフィスの作品なのだ。 こうしたグリフィスのメッセージは当時において時代遅れであり、それゆえに観客が離れていったと言われる。だが、映画と…

マキノ映画と寿々喜多呂九平と阪東妻三郎

…。佐平次捕物帖にヒントを得た紫頭巾の続編ともいえる作品である。その後も、寿々喜多は阪東主演の「火の車お萬」(1923)といった作品の脚本を書いた。阪東は1953年に死去するまで、文字通りのチャンバラ王として活躍していくことになる。 マキノ映画からは、阪東妻三郎意外にも、月形竜之介、高木新平、市川右太衛門、嵐寛寿郎、片岡千恵蔵といったスターを誕生させ、チャンバラ映画を一新した。だが、彼らは人気を得ると独立していき、マキノ映画はつねに野心的な独立プロダクションの地位にとどまった。

 映画評「ドクトル・マブゼ」

…せる時に浮かび上がる文字が秀逸)といった映画的トリックや表現主義的なセットや演技を取り入れ、時にリアリスティックに時にファンタジックに物語を語っていく。 「ドクトル・マブゼ」は、ラングがある犯罪物語を監督としての腕前を発揮して作った作品である。3時間という長尺ゆえに、深いメッセージを込めて作られた作品のように思われるかもしれないが、そうではない。ここにあるのは、「3時間に渡る」犯罪物語だ。 一方で「ドクトル・マブゼ」には独自の何かも感じられる。それは、アンダーワールドと上流階…

 映画評「DANSE MACABRE」

…ACABRE」という文字を形作っていく冒頭のアニメーションがカッコ良い。数分の短編作品で、ストーリーよりもビジュアル的を優先していることがタイトルからも分かる。さらには、男女の演技もバレエそのままであり、そこに二重写しで骸骨が現れて踊り狂う。女性の苦しみが絶頂に達して骸骨がとどめを刺そうとするショットでは、二重写しの骸骨を巨大に映し出して恐ろしさを倍増させている。 製作会社の名前から想像される、「映像による交響詩」は見事に結実している。音楽つきという条件付きだが、一見の価値あ…

 「愚なる妻」 シュトロハイムの苦難の始まり

…。シュトロハイムの頭文字をSではなく、$で表現したりもした。公開されてからは、ニューヨークのブロードウェイに現在の興行収入を知らせる掲示板を設置した。 このようなレムリの周到な宣伝にはさすがと思わせるものがある。だが、一方でシュトロハイムは金のかかる監督だというイメージが植え付けられ、このイメージはシュトロハイムのキャリアに大きな影響を与えていく。しかし、シュトロハイムが実際に金をかけたことも確かだった。モンテ・カルロの中央広場の再現に金がかかったのは仕方がないとしても、サイ…

 映画評「THE SPORTSMAN」

…見たこともあるような展開である。ライオンが使われる作品は他にもあるが、この作品は本当にライオンに接近して撮影しているように見える。カメラ・トリックを使っているとしたら、かなりの腕前だ。 シーモンは、スタントも使用するし、カメラ・トリックも使用するコメディアンだ。この作品では、ライオンの登場によって驚いた肖像画の中の人物が、走って逃げだすといったギャグ。ライオンに怯えた兵士が(文字通り)小さくなってしまうといったギャグで、ジョルジュ・メリエス流のカメラ・トリックを見せてくれる。

 映画評「THE DEERSLAYER」

…のである。若き日のベラ・ルゴシが出演している。 字幕が多く、ストーリーは映像というよりも文字で説明されている。同年にアメリカで作られた、同じクーパー原作の「モヒカン族の最後」(1920)と比べると、迫力や語りのうまさにおいて格段に落ちる。 私が最も興味を引いたのは、この作品がドイツで作られているという点だ。ドイツを舞台に翻案されているのではなく、アメリカが舞台なのである。ドイツにはカール・マイ原作の西部劇小説の人気が非常に高かったらしいし、この後もドイツは西部劇を作っていく。

 映画評「カリガリ博士」

…CALIGARI」の文字がネオンのようにカリガリをさいなむ。発狂が「世界が様相を変える」という意味もあると考えると、この演出は適切すぎるほど適切といえるだろう。 「カリガリ博士」のラストは当初の予定から変更されている。当初は、最初と最後のシークエンスはなかったのだという。つまり、カリガリ博士の物語は精神病者の妄想ではなかったということだ。となると、映画は「表現主義」だけで成り立つ映画となり、この世ではないどこか別の架空の世界の物語という作品となっていたことだろう。この変更によ…

 映画評「臆病者」

…RIMITIVE」の文字の後に、それぞれヨーロッパ人とネイティブ・アメリカンが映し出されという分かりやすさである。 この主張はうるさく感じられる。だが、それを体現しているダグラス・フェアバンクスの活躍は楽しい。これまでに作られたダグラス・フェアバンクスの作品と比較して、新鮮な部分が多くあるかと言われると、そうでもない。だが、様々な映像テクニックを駆使した、上質のフェアバンクスになっていることは確かだ。 それは、アニメを使ってホーカーの悪事を説明して見せたりとか、ミニチュアとセ…

 ドイツ 表現主義の影響が映画へ

…い。 「表現主義は、文字通りの意味にしたがって行動する。すなわち、どんな犠牲を払っても芸術家の感情を表現するのであり、その犠牲とは普通ほとんどグロテスクといってよいほど自然を誇張、歪曲するのである」 表現主義は、決して映画だけの運動ではなく、様々な分野に横断するものだった。むしろ、映画が表現主義へと向かったのは他の分野よりも遅かった。ちなみに、当時のドイツの状況について、ジョルジュ・サドゥールは「世界映画全史」の中で、次のように書いている。 「敗戦に続く混乱した日々に、表現主…

 映画評「雑貨屋」

…ギャグ1つ取っても、文字通りの大爆発でその大げささで圧倒される。強盗との追いかけっこでは、何のためにあるのかよく分からない巨大な見張り台のような建物とロープを使って、サーカスのようなスペクタクルを見せてくれる。 スタントの大きさはバスター・キートンの後の映画を凌駕しているともいえるが、キートンの映画がキートン自身によってスタントが行われていることが画面からも分かるのに対して、シーモンはカットを割っており、おそらくスタントマンが演じたのではないかと思われる。だが、そのことによっ…

 失われた技法 染色と着色

…、「総天然色」という文字を見ることができる。私は昔からこう思っていた。別に「カラー」と書けばいいじゃないかと。その理由が、サイレント映画を見ていてわかった。それは、「総天然色」以外にもカラー映画が存在していたからなのだ。つまり、人工のカラー映画が。 サイレント時代のカラー映画については2種類のものがある。1つは「着色」された映画であり、もう1つは「染色」された映画である(この用語は厳密に定義されているわけではない)。 「着色」とは、フィルムに直接筆などで着色していったものだ。…

 クロース・アップ 愛すべきサイレント映画最大の武器

…言われた技法である。文字通り、顔であったり、手であったり、物であったりといった特定のものを、スクリーンに大きく写すのが、クロース・アップである。 D・W・グリフィスが「発明」したとも言われるが、これは間違いである。グリフィスが映画界入りする1908年以前から、クロース・アップを使用した映画は作られていた。だが、グリフィスが映画話法を発達させる上で、クロース・アップを効果的に使用したことは間違いない。 映画草創期において、映画は舞台よりも格下であるという位置づけに置かれていた。…

 ニュース映画の誕生

…では、ニュース映像は文字通り無限に溢れている。 ニュース映像を撮影するハードの一般化は、ニュース映像の増殖を招いたが、一方で格差も招いている。例えば、東京の中心街で多くの人の見守る前で起こった通り魔殺人の映像は、周りにいる一般人によって撮影され、すぐにネットやテレビなどで流される。しかし、東北の山奥が震源の地震が発生しても、テレビは発生から3時間以上経たないと被害の大きい山奥の映像を流すことができない。 この現象は、映像を撮影するハードが今ほど普及していなかった時代においても…

 映画評「W.S.S. THRITTETTES」 

製作国アメリカ BDFフィルムス製作 監督・作画ジョージ・ラ・カヴァ 製作ウィリアム・ランドルフ・ハースト 「HURRY THE END OF THE WAR」の文字の下を馬車が疾走する。 「W.S.S.」とは戦時倹約切手のことで、この販売促進のために製作された作品だという。

 「サーカスが来た!」を読んで

…間の広範な市民階層、文字通りのミドル・クラスを、自分のなかにとりこんだことでもある。じっさい、映画ほどアメリカ全土のすみずみにまで普及し、老若男女のいっさいをとりこにした娯楽はなかった。オペラ・ハウスすらない田舎の町にも映画館はでき、その地方の「文化の殿堂」となった。映画こそ、二十世紀アメリカの大衆文化の精華だということは、誰も否定できないだろう」 亀井俊介著「サーカスが来た!」の一文である。 「サーカスが来た!」は、アメリカの大衆文化をサーカス、ヴォードヴィル、巡回公演、ダ…

 その他のアメリカのアニメーション映画 1916年

…。 「いかれ猫 Gの文字について討論する」 製作国アメリカ 原題「KRAZY KAT AND IGNATZ DISCUSS THE LETTER "G"」 インターナショナル・フィルム・サービス製作 監督グレゴリー・ラ・カヴァ ネコとネズミのキャラクターが「有名人にはGがイニシャルの人が多い」という議論をする短編アニメ。新聞の4コマ漫画のようなテイストの作品。 「いかれ猫 彼が私を夢中にさせた」 製作国アメリカ 原題「A Duet」 インターナショナル・フィルム・サービス製作…

 ドイツ映画、イギリス映画、スペイン映画 1915年

…ヘラベルトは、バルシノーグラフォ社で「海の娘」「ショパンのノクターン」(1915)といった作品を、セグレ・フィルムス社で「野営地のカラス」(1915)を製作している。 また、人気スターだったホアキン・カラスコは、「ジプシー娘」(1915)に出演している。 (映画本紹介)スペイン映画史作者: 乾英一郎出版社/メーカー: 芳賀書店発売日: 1992/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る 文字通りスペインの映画史を概観した1冊。

 「オズ」シリーズ作「HIS MAJESTY THE SCARECROW OF OZ」

…後、缶に書かれている文字の一部を消して「ウィッチ(魔女)」とするといったユーモアも楽しい。 と、何も考えずに楽しめるこの作品だが、その裏のライマン・フランク・ボームのメディア・ミックス戦略の方が興味深い。(ビデオ紹介) His Majesty, the Scarecrow of Oz [VHS] [Import]出版社/メーカー: American Home Entertainment発売日: 1997/07/24メディア: VHS クリック: 2回この商品を含むブログ (2…

 アドルフ・ズーカーの長期ロードショー制度が映画にもたらしたもの

… ニッケルオデオンは文字通り「ニッケル(5セント)」という安価で映画を提供する映画館であり、労働者階級の人々の圧倒的な支持を受けたと言われている。だが、一世を風靡したニッケルオデオンの経営に携わっていたズーカーは、1909年頃に経営危機に陥ったといわれている。だが、ズーカーはこの危機を乗り切ってみせる。 ズーカーが危機を乗り切ったのは、ある1本の作品を自分の映画館で上映し、大ヒットを収めたからである。その作品は、フランスのパテ社製作の「我らが主なるイエス・キリストの生涯と受難…

 スペイン映画(1914年)

…立された会社で、当時としては最高のスタッフや俳優を傘下に収めていたと言われている。バルシノーグラフォ社の作品としては、フランクトゥオッソ・ヘラベルト製作「一を聞いて十を知る」(1914)、アドリアン・グアル監督の「サラメアの村長」(1914)などがある。 (映画本紹介)スペイン映画史作者: 乾英一郎出版社/メーカー: 芳賀書店発売日: 1992/07メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る 文字通りスペインの映画史を概観した1冊。

 MPPCが映画にもたらしたもの

…る。 「製作」とは、文字通り映画の製作を行うことである。映画を撮影することと言い換えてもいい。「映画会社」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「製作会社」かもしれない。 映画は複製芸術と呼ばれる。演劇やオペラなどは、生で行われる上演を見るという形式なのに対して、映画は作品の内容は1つではあるものの、オリジナルのコピー(複製)をわれわれは見るという形式となっている。演劇やオペラが上演されているそのとき限りの芸術であるのに対して、映画はコピーをしたものを見ることが前提となっているため繰…

 ソラックス社 アリス・ギィ監督作 1913年

…男女のケンカという、文字にするとくだらないが、上手く映画にすると魅力あふれる作品になる題材を扱っている。後に流行するスクリューボール・コメディの源流という指摘もあったが、まさにその通りだろう。互いに誤解をして・・・という展開は、オー・ヘンリーを思わせる部分もある(ギィも「最後の一葉」を映画化している)。15分弱という短い時間だが、微笑ましい小話である。 「結婚スピード狂」 製作国アメリカ 原題「MATRIMONY’S SPEED LIMIT」 ソラックス・フィルム・カンパニー…

 ミューチュアル社の誕生

…ッセルとボーマンの頭文字)設立された。キーストン社には、バイオグラフ社でD・W・グリフィスの元で修行し、バイオグラフ社の喜劇部門のトップとなっていたマック・セネットをチーフとして招いて映画を製作した。セネットとともに、後にチャップリンとのコンビ作も送り出すメイベル・ノーマンドもキーストンに入社している。キーストン社は毎週1本の1巻物(約15分)か2本の半巻物を量産した。ほとんど喜劇だが、ニュース映画も製作した。セネットは俳優兼監督である数人の「ディレクター」を管理する製作責任…

 フランス ゴーモン社の作品 1910年

…「WINE」といった文字が悪魔のように変化し、人間に入り込むと爆発するといった具合に象徴的に描かれている。当時アルコールの害は社会問題となっており、それを取り上げたのだろう。だが、ラストの楽しさを見ると、題材として取り上げただけで、コールが真剣にアルコールに反対しているのではないのかも知れない。 この作品でも、切り絵が使われている。切り絵は線画と組み合わされて使用されており、当時のコールの技法が様々な技法を盛り込んで変化しているのが分かる。 「CHAMPION DE PUZZ…

 フランス ゴーモン社の作品 1909年

…、親の反対にあって、文字通り破れたりと、愛すべき点が多々ある作品だ。 「L'AGENT A LE BRAS LONG」(1909) 製作国フランス 英語題「THE LONG ARM OF THE LAW」 監督ロメオ・ボゼッティ 腕を伸ばすことができる警官が、その特技を活かして泥棒を捕まえる。 この作品は楽しい。漫画「ワンピース」のルフィのように手を伸ばせる警官は、手を伸ばして川渡しをしてやったりする。その際に、伸びた先の手が動くあたり芸が細かい。泥棒を追って、煙突から手を伸…

 エジソン社の作品 1905年(10)

…剥がされてしまう。 文字が動いて文章を形作っていくのが、アニメーションで表現されている。この手のアニメーションの使用では最初期のものだという。 (DVD紹介)Christmas Past [VHS] [Import]出版社/メーカー: Kino Video発売日: 2002/08/06メディア: VHSこの商品を含むブログ (8件) を見るサイレント期に製作された、クリスマスをテーマにした作品集。今も昔も特別な日であるクリスマスは、もちろん映画草創期から取り上げられやすい題材…

 エジソン社の作品 1905年(2)

…ルにした作品。字幕の文字が動くのが特徴的(この頃のエジソン社の作品では頻繁に使われていた手法だという) エドウィン・S・ポーター監督作。 「CONEY ISLAND AT NIGHT」 コニー・アイランドの遊園地の電飾を撮影。 夜間撮影においては、多くの光量が必要だったことから、電飾がかなり明るいものであることがうかがい知れる。 (DVD紹介)Edison: Invention of the Movies [DVD] [Import]出版社/メーカー: Kino Lorber…

 エジソン社の作品 1898年

…。 貨車の横に大きな文字が書かれた紙が、いくつも貼られている。当時、列車に広告を出すことが一般的に行われており、これもその1つだと思われる。 「GOING THROUGH THE TUNNEL」(1898) カメラを最前部につけた列車がトンネルに入っていく。 列車の側から撮られたフィルムと、列車がやって来る側から撮られたフィルムが編集されているのが特徴。 「MOUNT TAW RAILROAD NO.3」(1898) 列車の先頭にカメラが取り付けられ、前を走る列車を追いかける…