エジソン社の作品 1899年

 これまでのエジソン社の作品で、編集が行われた作品はないに等しかった。エジソン社に限らず、初期の映画作品では「編集」という概念自体がなかったが、この頃から編集が行われた作品が登場し始める。


「FIREMAN RESCUING MEN AND WOMEN」(1899)

 消防士たちがアパートの窓から人々を助け出す様子を撮影。
 不自然な煙から、演出が施されているであろうという感じがする。


「A WRINGING GOOD JOKE」(1899)

 居眠りをしている男性が座っている椅子と、洗濯ものを絞る機械を、少年が紐で結びつけてしまい、女性が機械を動かすと椅子と機械が両方とも倒れてしまうというコント。
 舞台を撮影しているような構図になっている。


「GOLD RUSH SCENES IN THE KLONDIKE」(1899)

 ゴールドラッシュに沸くカナダのクロンダイクの街の様子を撮影。
 1つの場所だけではなく、当時の新聞のアップに街並みから採掘現場と、ゴールドラッシュに沸くクロンダイクの様子がいくつかの視点で見ることができるようになっている。言い換えれば、「編集」がされた映画といえる。


「ASTOR BATTERY ON PARADE」(1899) 

 海軍の兵士によるパレードの様子を撮影。


「U.S. CRUISER “RALEIGH”」 (1899) 

 軍船が進水する様子を撮影


TRICK BEARS」(1899) 

 熊を調教する様子を撮影。
 熊同士のレスリングをさせたりといった部分はわかるのだが、いったい熊に何をさせようとしているのかがよくわからない部分も多かった。


「COACHES ARRIVING AT MAMMOTH HOT SPRING」(1899) 

 道に停められた車から降りてくる人を待つ様子を撮影。


「U.S. TROOPS AND RED CROSS IN THE TRENCHES BEFORE CALOOCAN」(1899) 

 塹壕から相手に向けて発砲する兵士たちと、負傷した兵士を手当てする赤十字の人々を撮影。
 約1分の時間内にきっちりと収められていることから、本物の戦闘ではなく、演出されたものであることがわかる。


「SKIRMISH OF ROUGH RIDERS」(1899) 

 発砲しながら前進する馬に乗った兵士たちの様子を撮影。
 倒れた馬を押さえつける兵士が、いったい何をやっているかがよく分からない。


「ADVANCE OF KANSAS VOLUNTEERS AT CALOOCAN」(1899) 

 敵と銃撃戦になりながらも前進する兵士たちの様子を撮影。
 最初に、向こう側からこちらに向かって発砲しながらやってくる兵士たちの様子が映り、カメラの後ろ側から米兵がやって来て向こう側の兵士を後退させる。
 敵はカメラに向かって発砲する形となっているため、観客にとっても「敵」という認識がしやすくなっている。もちろん、実際の戦闘ではなく、再現された作品である。


「CAPTURE OF TRENCHES AT CANDABA」(1899) 

 塹壕で相手に向かって発砲している兵士たち。米兵が突撃してきて、兵士たちは蹴散らされる。
 再現された戦闘シーン。最初に、敵側にカメラが据えられていることからも分かる。米兵の1人がアメリカの国旗をはためかせてやって来る。国威高揚には十分な効果があったことだろう。


「RAISING OLD GLORY OVER MORRO CASTLE」(1899) 

 城の前で、掲揚されているスペインの国旗が降ろされて、代わりにアメリカの国旗が掲揚される。
 城は書割のように見える。


「MORNING COLORS ON U.S. CRUISER “RALEIGH”」 (1899) 

 軍船の舳先にアメリカ国旗を掲揚する様子を撮影。


「ADMIRAL DEWEY TAKING LEAVE OF WASHINGTON COMMITTEE ON THE U.S. CRUISER “OLYMPIA”」(1899) 

 提督が下船する様子を、船から撮影。
 人が多すぎて、誰が提督かよく分からない。


「FILLIPINOS RETREAT FROM TRENCHES」(1899) 

 塹壕で相手に発砲している兵士たち。馬に乗った米兵によって、蹴散らされる。
 再現された戦闘シーンだろうと思われる。


「ADMIRAL DEWAY LANDING AT GIBRALTAR」(1899) 

 ボートから陸に上がる提督の様子を撮影。
 人が多すぎるのと、顔がよくわからないために、誰が提督かがよくわからない。


「ADMIRAL DEWEY LEADING LAND PARADE」(1899) 

 馬に乗った兵士たちのパレードの様子を撮影。
 誰が提督かはわからない。


「ADMIRAL DEWEY RECEIVING THE WASHINGTON AND NEW YORK COMMITTEES」(1899) 

 港に入船する船上の提督と、提督を迎えるために船に乗り込む人々の様子を撮影。


「GENERAL LEE’S PROCESSION, HAVANA」(1899) 

 兵士たちの行進の様子を撮影。


「LOVE AND WAR」(1899) 

 戦争に旅立つ男性を見送る家族たち。戦場での戦いを生き延び、男性は家族の下に帰ってくる。
 戦争シーンをドキュメンタリー的に撮影したものでも、再現して見せただけのものでもない。ストーリーのある作品となっている。
 話は単純で、演出的に工夫が凝らされているわけではないが、ストーリーは分かりやすく見る者に伝わってくる。
 米西戦争の作品は多く作られているが、ストーリーがあることで、伝わってくるものがある。どこにでもいそうな家族たちの物語となっていることで、見る者にと米西戦争の距離感が一気に縮まる。


「NEW BROOKLYN TO NEW YORK VIA BROOKLYN BRIDGE, NO.2」(1899) 

 列車の先頭にカメラを取り付け、ブルックリン橋を渡ってニューヨークへと向かう様子を撮影。
 当時のニューヨークの様子の一端がわかる。


「104TH STREET CURVE, NEW YORK, ELEVATED RAILWAY」(1899) 

 ニューヨークの線路のカーブに行きかう列車を撮影。
 据え付けたカメラで、カーブを曲がる列車を撮影したショットと、列車にカメラを乗せて、列車側からカーブを曲がる様子を移動撮影したショットの2つをつなぐという工夫がされている。


「TENDERLOIN AT NIGHT」(1899) 

 ある酒場。1人の男性が眠っていると、盛装した女性たちが男性の時計や財布を取ってしまう。目が覚めた男性が、盗まれたことに気づいて騒ぎ出すと、警官に連れ去られてしまう。
 単純な話だが、男性がメキシコ系であるように見えることから、人種差別を描いた作品と取ることもできる。


「U.S. CRUISER “OLYMPIA” LEADING NAVAL PARADE」(1899) 

 多くの軍船の行列が進水する様子を撮影。


「U.S. INFANTRY SUPPORTED BY ROUGH RIDERS AT EL CANEY」(1899) 

 馬に乗った兵士たちが、進軍する様子を撮影。
 少し進んでは発砲する様子や、馬に乗って雄たけびを上げながら走り去っていく様子など、いくつかの様子が撮影されている。兵士たちの訓練の雰囲気。


「ADMIRAL DEWEY LEADING LAND PARADE NO.2」(1899) 

 兵士たちが行進する様子を撮影。


「2ND SPECIAL SERVICE BATTALION, CANADIAN INFANTRY PARADE」(1899) 

 兵士たちが行進する様子を撮影。


「TROOPS AT EVACUATION OF HAVANA」(1899) 

 兵士たちが行進する様子を撮影。


「LITTLE MISCHIEF」(1899) 

 少女がイスに座っている男性に近づき、こっそりとこよりで首をくすぐる。男性は、虫か何かだと思い振り払っているうちにイスから転げ落ちてしまう。


「LOWER FALLS, GRAND CANYON, YELLOWSTONE PARK」(1899) 

 滝を撮影。


「BICYCLE TRICK RIDING, NO.2」(1899) 

 自動車の曲芸を撮影。
 驚くほどの曲芸ではなかった。


「THREE ACROBATS」(1899) 

 2人の男性と1人の女性が、扉となっている壁を使ってドタバタを繰り広げる。


「FUN IN CAMP」(1899) 

 兵士たちが、手紙が配達されて喜んだりする様子などを撮影。


「CRIPPLE CREEK BAR ROOM SCENE」(1899) 

 酒場にやって来た酔っ払いの男性を、酒場のママが追い返す。
 1分にも満たない作品で、ワン・ショットだけだが、ストーリーがある。世界初のストーリーを持った西部劇とも言われている。


「TOURIST GOIN ROUND YELLOWSTONE PARK」(1899) 

 馬車が通り過ぎる様子と、馬車に乗る人々がカメラに向かって手を振っている様子を撮影。


「ARABIAN GUN TWIRLER」(1899) 

 銃(ライフルを)クルクルと回す芸をするアラブの男性を撮影。
 アラブ独特の芸なのかは不明。


「THE ASTOR TRAMP」(1899) 

 浮浪者が中流階級の家に入り込んでしまうが、家の人に見つかり追い出されてしまう。
 この後、新聞を読んで何やらわめいており、何らかのストーリーがあるように見えるが、実際のところはよくわからない。


「”COLUMBIA” WINNING THE CUP」(1899) 

 ヨットレースに参加して、航行するヨットを撮影。


「MESMERIST AND COUNTRY COUPLE」(1899) 

 1組のカップルが催眠術師の元を訪れる。催眠術師の合図で、カップルは消えたり、お互いの場所が入れ替わったりする。
 ジョルジュ・メリエス風のストップ・モーションを使ったトリック映画。軽く見る分には楽しい作品だが、メリエスのような工夫はされていない。メリエスのエンターテイナーぶりが、こういった作品と比較するとよくわかる。


「NEW YORK POLICE PARADE」(1899) 

警官による行進の様子を撮影。


「PILOT BOATS IN NEW YORK HARBOR」(1899) 

航行する船の様子を撮影。


「CASEY AT THE BAT OR THE FATE OF A "ROTTEN" UMPIRE」(1899)

 バッターが空振りをした後、審判につっかかる。
 タイトルの「CASEY AT THE BAT」は野球についての有名な詩だというから、この作品はおそらくパロディだろう。
 詩については、http://www.yamaneko.org/dokusho/shohyo/cafe/break/2001/b11.htmを参照。


「STRANGE ADVENTURE OF NEW YORK DRUMMER」(1899)

 製作国アメリカ エディソン・マニュファクチュアリング・カンパニー製作・配給
 監督・撮影エドウィン・S・ポーター

 2人の男が、消えたり現れたりを繰り返しながら争う。

 ジョルジュ・メリエスお得意のストップモーションを使用した、人物消失を楽しませてくれる作品。メリエスの作品が舞台の出し物のような雰囲気が多い中、よりリアルな内容となっている。同じ技法を使い、同じような内容にもかかわらず、印象が違うのが面白い。




(DVD紹介)

Edison: Invention of the Movies [DVD] [Import]

Edison: Invention of the Movies [DVD] [Import]

映画初期のエジソン社製作の映画を大量に見ることができる4枚組DVD−BOX。各作品についての解説(英語)もあり、かなり親切な作りになっている。

注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。