2013-01-01から1年間の記事一覧

「ドロシー・ヴァーノン」と”少女女優”メアリー・ピックフォード

大人の女優への脱皮を目指していたメアリー・ピックフォードは、秘策としてドイツよりハリウッドへやって来ていたエルンスト・ルビッチ監督の「ロジタ」(1923)に出演するも失敗に終わっていた。 当初ピックフォードがルビッチに監督を依頼しようとしてい…

「ロモラ」 グリフィス抜きのリリアン・ギッシュの活躍

かつてコンビを組んでいたD・W・グリフィスが人気の面で堕ちぶれていくのとは対照的に、リリアン・ギッシュの人気は絶大だった。この年には、ヘンリー・キング監督の主演作「ロモラ」が公開されている。 「ロモラ」は前作「ホワイト・シスター」(1923)…

ハリー・ラングドン セネットが見つけた最後の大喜劇俳優

サイレント期に人気を博したコメディアンにハリー・ラングドンがいる。ヴォードヴィル出身のラングドンは、マック・セネットが見つけた最後の大喜劇俳優と言われる。若き日のフランク・キャプラがラングドンのギャグマンであり、監督を務めた。キャプラはハ…

「ロイドの初恋」「猛進ロイド」ハロルド・ロイド 平凡な青年の大活躍

愛する人を得るために平凡な青年が大活躍するという、アメリカ喜劇ではお馴染みの設定を生かした作品で人気を得たハロルド・ロイドは、愛する女性を結婚式場から奪うために自動車・馬車・バイク・電車などを使って突進する「猛進ロイド」(1924)や、「…

バスター・キートンの骨折とアーバックルの監督復帰

バスター・キートンは、「海底王キートン」「探偵学入門(忍術キートン)」(1924)に主演している。相変わらずの体を張った作品であり、「探偵学入門」の撮影に際して首の骨を折るが、そのときは気づかずに後年検査したときにわかったという。ちなみに、…

新スター、ラモン・ノヴァロの活躍

人気スターとなっていたラモン・ノヴァロは、「アラブ」(1924)や「紅百合」(1924)に出演している。 「アラブ」は、「黙示録の四騎士」(1921)を監督するなど、当時のハリウッドで有力な監督の一人だったレックス・イングラムが監督している…

ジョン・バリモアと美男スターたち

美男俳優として人気を得ていたジョン・バリモアは、「ボー・ブラムメル」(1924)に出演している。恋人が政略結婚を強いられて去ったために貴族への復讐を誓った平民ブランメルが、術策と自身の魅力を使って貴族たちの心をつかんでいくという内容で、バリ…

「ボーケール」 ルドルフ・ヴァレンティノの苦戦

ルドルフ・ヴァレンティノは、処遇への不満から所属していたパラマウントと裁判にまでなった後、映画製作について完全な支配権を得ることができるようになった。そして作られた「ボーケール」(1924)が公開されている。監督はシドニー・オルコットが担当…

ヴィクトル・シェーストレームのハリウッドでの出発

スウェーデンからハリウッドにやって来たヴィクトル・シェーストレームは、第1作としてアイルランドのマン島が舞台のホール・ケーン原作「男の名を言え」(1924)を監督。続いて、ロシアのペシミズムの巨匠レオニード・アンドレーフの劇の映画化であり…

「結婚哲学」 アメリカへ渡ったルビッチ・タッチ

エルンスト・ルビッチは、ドイツ時代の艶笑喜劇の世界を洗練させた「結婚哲学」(1924)をパラマウントで監督している。ルビッチはこの後、繊細な心理的表現とウィットに富んだ官能的表現によって独自の境地を開いていく。その手法は「ルビッチ・タッチ」…

ジョン・フォードが描くアメリカの叙事詩大作「アイアン・ホース」

ジョン・フォード自身が最も好きな映画だと語り、フォードが注目されるきっかけとなった作品がこの年作られている。それは、1860年代の大陸横断鉄道敷設の物語をベースにした「アイアン・ホース」(1924)である。1923年に製作された「幌馬車」に…

ボロボロの苦難の結晶「グリード」とシュトロハイムの涙

D・W・グリフィスやセシル・B・デミルと共に、初期アメリカ映画界の三大監督のひとりと言われる一方、1923年に「メリー・ゴー・ラウンド」の監督から降ろさる苦汁をなめたエーリッヒ・フォン・シュトロハイムは、「グリード」(1924)を監督している…

「バグダッドの盗賊」 ”活劇スター”ダグラス・フェアバンクスのピーク

ダグラス・フェアバンクスは、莫大な製作費をかけた「バグダッドの盗賊」(1924)に出演している。 「バグダッドの盗賊」は、「ロビン・フッド」(1922)のセットを活用したという見事なセットと魔術的な特殊撮影が有名だ。アラビアンナイトものの最高…

D・W・グリフィスの必死の映画製作 「アメリカ」「素晴らしき哉人生」

興行的なヒット作を生み出せず、必死の映画製作を行っていたD・W・グリフィスは、独立戦争を描いた「アメリカ」や、第一次大戦後の食糧難にあえぐドイツの家族を描いた「素晴らしき哉人生」(1924)といった作品を監督している。真剣でケレン味のない…

続くスキャンダル メイベル・ノーマンド

トマス・H・インスの謎の死に続いて、メイベル・ノーマンドと交際中の金持ちが銃撃されるという事件が起こった。銃撃したのが、メイベルのお抱え運転手であり、さらに運転手が脱獄囚だったことから、大きなスキャンダルとなった。 1922年に起こったデズ…

トマス・H・インスの謎の死とウィリアム・ランドルフ・ハーストとマリオン・デイヴィス

1910年代の後半に、映画製作者として揺るぎない名声を築いたトマス・H・インスは大金持ちとなっており、スペイン王朝風の大邸宅を構えていた。インス家のゲストルームは、週末のパーティで意気投合したカップルのくつろぎの場となり、インスは秘密の通…

ハリー・コーンによるコロムビア設立

1924年、ユニヴァーサル社の社員だったジョー・ブラントとコーン兄弟(ジャック・コーンとハリー・コーン)が1920年設立したCBC Film Sales Corporationの社名を「コロムビア」に変更している。ハリー・コーンは後にユナイテッド・アーティスツの社…

ハリウッドの発展を物語る3つの年

MGMが設立された1924年を、ハリウッドの発展を物語る3つの年の3つ目として、ジョルジュ・サドゥールが「世界映画全史」の中で挙げている。3つの年と理由を挙げると次のようになる。 1つ目の年は、トライアングル社が設立された1915年である。…

ライオンマークのMGMが設立

1924年4月17日、現在でも名を残す映画会社が誕生している。メトロ=ゴールドウィン=メイヤー(MGM)である。MGMは、それまでの最大手だったパラマウントを脅かす存在となっていく。 MGMは、マーカス・ロウが自身の保有するメトロ社に、独立…

映画評「小雀峠」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]日本 [製作]マキノ映画製作所[監督]沼田紅緑 [原作・脚本]寿々喜多呂九平 [出演]市川幡谷、阪東妻三郎 飴を売る子供の徳太郎に改心を勧められて、仙吉らの盗賊は、徳太郎と一緒に飴を売る旅をする。ある町で侍…

映画評「蠱惑の街」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]ドイツ [原題]DIE STRASSE [英語題]THE STREET [製作]STERN-FILM [配給]ウーファ[監督・脚本]カール・グルーネ[出演]オイゲン・クレッパー、ルチー・ヘーフリッヒ、アウド・エゲーデ=ニッセン 退屈な家庭に飽…

映画評「戦く影」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]ドイツ [原題]SCHATTEN - EINE NACHTLICHE HALLUZINATION [英語題]WARNING SHADOWS[製作]PAN FILM[監督・脚本]アルトゥール・ロビソン [脚本]ルドルフ・シュナイダー [撮影]フリッツ・アルノ・ワグナー[出演]…

映画評「罪と罰」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]ドイツ [原題]RASKOLINIKOW [英語題]RASKOLNIKOFF[監督・脚本]ロベルト・ヴィーネ [原作]フョードル・ドストエフスキー[出演]グリゴリ・クマーラ 貧しいラスコーリニコフは、「選ばれた人間は、世の中のために…

映画評「鉄路の白薔薇」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]フランス [原題]LA ROUE [英語題]THE WHEEL[監督・脚本]アベル・ガンス [撮影]マルク・ビュジャル、アルベール・デュヴェルジェ、レオンス=アンリ・ビュレル [出演]セヴラン・マルス、ガブリエル・ド・グラヴ…

映画評「理性への回帰」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]フランス [原題]LE RETOUR A LA RAISON [英語題]RETURN TO REASON フランスの写真家マン・レイによるシュールで前衛的な作品。 集会のために24時間で作られた作品らしく、マン・レイはフィルムに塩と胡椒を…

映画評「微笑むブーデ夫人」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]フランス [原題]LA SOURIANTE MADAME BEUDET [英語題]THE SMILING MADAME BEUDET[監督]ジェルメーヌ・デュラック[出演]ジェルメーヌ・デルモス、ジャン・ディド、マドレーヌ・ギティ 女性監督であるジェルメー…

映画評「LA VOIX DU ROSSIGNOL」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]フランス [英語題]VOICE OF THE NIGHTINGALE [製作]PATHE CONSORTIUM CINEMA[監督・脚本・撮影・美術]ヴワジスワフ・スタレーヴィチ ナイチンゲールを捕まえた少女だが、夫のナイチンゲールが妻のナイチンゲー…

映画評「LES GRENOUILLES QUI DEMANDENT UN ROI」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]フランス [英語題]THE FROGS WHO WANTED A KING [製作]Polichinei-Film[監督・脚本・撮影・美術]ヴワジスワフ・スタレーヴィチ カエル国のカエルたちは、神様に自分たちの国を統治するための王を送ってもらう…

映画評「CRAINQUEBILLE」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]フランス、ベルギー [製作]FILMS A. LEGRAND[監督・脚本]ジャック・フェデー [原作]アナトール・フランス [出演]モーリス・ド・フェラウディ リアカーを引いて露店で野菜を売る生活を40年以上続けてきたクラ…

映画評「SCROOGE」

※ネタバレが含まれている場合があります[製作国]イギリス [別題]A CHRISTMAS CAROL[製作]ブリティッシュ・アンド・コロニアル・キネマトグラフ・カンパニー [配給]Walturdaw[監督]エドウィン・グリーンウッド [製作]エドワード・ゴダル [原作]チャールズ・デ…