イングリッシュ・ミュートスコープ・アンド・バイオグラフ社の作品 1899年

「King John(ジョン王)」

 アメリカン・ミュートスコープ・アンド・バイオグラフ社(後にバイオグラフ社となる)のイギリス支社であるイングリッシュ・ミュートスコープ・アンド・バイオグラフ社が製作した作品。

 ウィリアム・シェイクスピアの「ジョン王」の映画化作品である。といっても、2分程度の作品で、ジョン王の死のシーンのみとなっている。シェイクスピア作品の初の映画化作品とも言われている。また、ジョン王を演じている役者は有名なシェイクスピア俳優であるという。

 ストーリーが物語られているわけではなく、死を目前に控えながら、何やら絶叫しているジョン王の姿が、舞台風のセットを正面から捉えたカメラによって撮影された作品となっている。したがって、原典を知らない人にはただ1人の男性が叫んでいるだけにしか見えないだろう。当時の「映画」が、まだ物語を語るのではなく、何らかの「シーン」を映し出すものであったことや、そのために誰でも知っている有名な物語のワンシーンが取り上げられているということがよくわかる。また、映画スターというものがまだ存在せず、舞台で有名な役者が演じているということが当時の重要なファクターの1つだったということもこの作品は教えてくれる。