アメリカ ユニヴァーサルの作品 1912年

「THE COST OF CARELESSNESS」

 路面電車や自動車による交通事故を回避するための様々なレクチャーが収められた作品。

 路面電車を運営していたニューヨークのブルックリン交通局がスポンサーとなって製作されている。主に子供たちに向けて作られており、路上で遊ぶことの危険性などが実例で描かれる。

 走行中の路面電車に飛び乗ったり、明らかに定員オーバーの路面電車にしがみつく乗客たちといった構図は、チャールズ・チャップリンの「給料日」(1922)などで見ることが出来る。今では見ることのないこれらの光景は、交通ルールが変わったり、路面電車自体が変わったりしたことによる。

 この作品の中で描かれる様々なレクチャーは今から見ると驚くようなものも多い。たとえば、路面電車に飛び乗る男が突き落とされたり、急停車しても落ちないように走行中は扉が開かない最新式の車体が紹介されたりといったものがそうだ。

 当時は自動車や電車といった交通機関が登場したが、安全性に対する整備が整っていなかったことが、この作品を見るとよく分かる。歴史的に価値のある作品と言えるだろう。


「THE NEW FIRE CHIEF」(1912)

 製作国アメリカ IMP製作 ユニヴァーサル・フィルム・マニュファクチュアリング・カンパニー配給

 町の消防隊を組織することになった4人の男たちだが、ドタバタばかり。

 登場するキャラも地味で、ちょっとしたコメディという印象が強い。後にチャールズ・チャップリンが短編でも消防夫を演じているが、真面目じゃなければ勤まらない仕事なだけに、逆にコメディに向いているともいえる。

 火事の現場で美人の女性を誰が助けるかで消防夫たちが揉め、酒場に行ってカードで決着をつけるギャグ。5時になった消火中でも帰ってしまうギャグ(後にロスコー・アーバックルとバスター・キートンが出演する「自動車屋」(1920)にも同様のギャグがある)など、消防夫としてはふざけている。というわけで、ちょっとしたコメディである。