キーストン時代のチャップリンの作品「チャップリンの総理大臣」

 場末のキャバレーで給仕の仕事をするチャーリーは、上流階級の女性が強盗に襲われたところを助けてあげる。そこで某国の「総理大臣」と詐称した身分を名乗ったチャーリーは、助けた女性のパーティに呼ばれる。一方、女性のことを好きな上流階級の男は、チャーリーの後をつけて給仕であることを知る。男は、上流階級の女性たちを見学と称してチャーリーの働くキャバレーに連れて行き、そこでチャーリーと女性は再会する。

 と書くと、後年のチャップリンの長篇「街の灯」(1931)を思い出される展開だが、最後はにっちさっちもいかなくなったチャーリーが暴れ出してドタバタになり、悲劇色はない。

 パントマイム的にはチャップリンはそれほど優れたものをこの作品では見せていないと思う(ガニマタのアヒル歩きの萌芽が見られるとはいえ)が、ジョルジュ・サドゥールが語っているように初監督の脚本(チャップリン自身による)が「偽牧師」(1923)「街の灯」といった「別人と間違えられる」という、チャップリン映画に今後よく登場する展開と共通する点は興味深い。 ※「総理大臣」は初監督と言われていたが、最近の研究では「恋の20分」が初監督作のようで、「総理大臣」はメイベル・ノーマンド監督作らしい。

 とはいえ、この作品のチャップリンは、自分から見栄を張るために自らを「総理大臣」と名乗っているため、話を展開する仕掛け以上のものは生まれていないのだが。

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