キーストン社の作品「A SUBMARINE PIRATE」

 キーストン・フィルム製作 トライアングル・ディストリビューティング配給
 監督・主演シド・チャップリン

 レストランのボーイとして働く主人公の男は、潜水艦を使って黄金を積んだ船を襲う計画を練る客の話を聞く。主人公は客に成り代わって潜水艦に乗り込み、黄金を手に入れようとする。

 1915年、チャールズ・チャップリンがエッサネイに移籍したキーストン社は、穴埋めとしてチャールズの兄であるシド(シドニー)・チャップリンを雇い入れる。この作品は、そのシドを主演とした作品である。恐らくは、「チャップリンの兄」として大々的に宣伝されたことだろう。

 個人の芸よりも、プロットと大掛かりな撮影に力が入れられている作品である。実際の潜水艦が使われた撮影はかなり大掛かりで、浮上している潜水艦の上にシドがいるにも関わらず浸水していくギャグは、危険でもあり見応えがある(スタントマンを使ったのかもしれないが)。

 芸人としての素養もあるシドは、弟のチャールズほどではないが、芸の冴えを見せる。皿洗いをしているシドが、皿を何回も落としそうになるが、その度に床に落ちる寸前に取り上げるギャグは見事だ。

 キーストン社の短編コメディは当初、撮影所近くの公園で手軽に撮影された追っかけだった。観客は徐々にそれに慣れてきたため、工夫が凝らされ、規模も大きくなっていく。そして、予算も危険も大きくなっていき、アイデアも枯渇して衰退していく。この作品の規模の大きさは、そんなキーストンの短編コメディの軌跡の一端を垣間見ることができる。