トマス・H・インス製作の作品「THE ITALIAN」

 ニュー・ヨーク・モーション・ピクチャー・コーポレーション製作 パラマウント・ピクチャーズ配給
 監督レジナルド・ベイカー 製作・脚本トマス・H・インス 脚本C・ガードナーサリヴァン
 出演ジョージ・ベーバン

 イタリアに生まれたベポは、アメリカに移民し、愛する女性アネットをアメリカに呼び寄せて結婚する。2人の間には男の子が出来るが、熱波によって病気になってしまう。殺菌されたミルクを飲ませようと奔走するベポだが、なけなしの金も奪われてしまい・・・。

 シンプルなタイトルが示すとおり、あるイタリア人の物語である。美しい風景と、牧歌的な雰囲気のイタリアと比べて、夢の国であるはずのアメリカには厳しい現実しかないかのようだ。主人公のベポは、イタリアでは伊達な髭を生やし、運河のボートを漕ぎ、吟遊詩人のように歌を歌っている。しかし、アメリカに渡った後のベポは、必死に靴磨きをして働き、髭を生やした顔からは個性がなくなり、後退した額は年輪を感じさせる。

 小さな伏線も効いているし、鬼気迫るクロース・アップも効果的に使われている。セットも素晴しく、イタリアとアメリカの時の流れの速さの違いを感じさせることに成功しているように思える。

 メロドラマといってしまえばそれまでだ。だが、十分な苦さを兼ね備え、ストーリー的にも、演出的にも工夫された作品で、トマス・H・インス製作作品のレベルの高さが伺える作品である。

 余談だが、この作品を見た多くの人が「ゴッド・ファーザー PART2」を思い出すことだろう。イタリアからの移民の物語であること、イタリア人街を仕切るボスが登場する点など、似ている。だが1つ違うのは、ベポは1人の靴磨きであり、マフィアにはならなかったということだけである。