映画評「仮面の人」

 製作国アメリカ 英語題「THE FALSE FACES」 製作・配給パラマウント・ピクチャーズ
 監督・脚本アーヴィン・ウィラット 原作ルイス・ジョセフ・ヴァンス
 出演ヘンリー・B・ウォルソール、メアリー・アンダーソン、ロン・チェイニー

 アメリカのスパイであるマイケルは、ドイツ側のスパイであるエックストロームとの間で、重要な情報が含まれている小さなシリンダーを巡る攻防を繰り広げる。

 第一次大戦を舞台にしたスパイ・アクション映画である。ハンサムな主人公、非情な悪漢の対決に、美しい女性が絡むという非常にストレートな内容の作品だ。

 注目すべきは、第一次大戦後すぐに公開された作品であるという点だ。公開は大戦後だが、おそらく製作は大戦中にスタートしている。1915年にドイツの潜水艦の魚雷によって撃沈された客船ルシタニア号に対して、魚雷を発射したというドイツ人船長まで登場させている。ルシタニア号の撃沈は、アメリカ人にとって第一次大戦への参戦の世論を高めた事件であり、映画内にわざわざ登場させることは、映画にプロパガンダ的な意味合いを持たせている(ちなみに、ドイツ人船長はルシタニア号で死んだ人々の幻影に悩まされている。二重写しを使った幻影の描写は見事だ)

 プロパガンダ的な色彩があるものの、基本的には娯楽作だ。二転三転するストーリーに、アクション、ロマンス・・・今見ると物足りない部分は多々あるが、1919年の娯楽作が現在にも通じる部分を持っていたことを良く分かる作品だ。