写真 露光時間

 露光時間について。当初、露光時間は、撮影に適した場所において15分くらいだったと言われている。「撮影に適した場所」というのは、どういう場所か?それは簡単だ。太陽光が強い場所のことである。つまり、当時写真を撮ろうと思ったら、強い太陽光を15分くらい浴びながらじっとしていなければならなかったのだ。これは、けっこう辛いものがある。当時の人も辛かったらしく、被撮影者が座る椅子の後ろには首を支える棒がニョキっと出ているものがあったらしい。
 昔の肖像写真を見ていて、何だかみんな生気が抜けているような顔をしていると思ったことがある人もいるかもしれない。私もそう思ったことがあった。だが、当時の人々は生気が抜けていただったわけではないのだ。彼らは長時間の撮影によって、「生気が抜かれていた」のだ。
 今度、19世紀の肖像写真を見る機会があったならば、是非とも年代を見て欲しい。そして、1840年台の写真だったならば、表情を注意して見て欲しい。そして、もしも生気溢れる表情で映っている人がいたならば、その人は我慢強いか、感覚が鈍いかのどちらかであることだろう。
 サイレント初期は手回しだったため、上映の際に正確に再現されなかったが、1秒間16コマで撮影されていた。つまりどういうことかというと、最低でも1/16秒に1枚フィルムが撮影できなければならないのだ。1枚15分かかっていては1分の映像を撮影するのに、純粋な撮影時間だけで15(1枚の撮影にかかる分数)×16(1秒分の枚数)×60(秒)=300分(5時間)ということになる。しかも、映像はストップモーションとなり、純粋な動きの再現とはならない。
 映像の誕生において、露光時間の短縮は絶対条件だったのだ。