アメリカン・ミュートスコープ・アンド・バイオグラフ社の作品 1906年

「FROM LEADVILLE TO ASPEN: A HOLD-UP IN THE ROCKIES」

 アメリカン・ミュートスコープ・アンド・バイオグラフ社(後にバイオグラフ社となる)の作品。

 とある駅。1人の男がカメラの方へとあわててやってくる。すると、カメラは徐々に前の方へと動き出す。映像は汽車の主観映像となっていたのだった。

 しばらくは田舎の線路を走る汽車の主観映像が続き、途中車内の男女たちによるコントが挟まり、主観映像へと戻る。すると、線路に汽車の通行を邪魔する木が置かれており、汽車は止まる。それは、列車強盗の仕業であり、乗客たちは金品を取られてしまう。トロッコによって逃げる列車強盗と、車で追いかける人々。その様子を走る汽車の主観映像が捉える。最後には強盗たちが捕まって終わる。

 「ヘイルズ・ツアーズ」と言われる映像を使ったアトラクションがこの当時流行っていた。「ヘイルズ・ツアーズ」は、列車の車内を模した場所の先頭に汽車の主観映像を映し出し、効果音と振動を付け加えて実際に汽車に乗っているような気分を味わえるというもの。この作品も、「ヘイルズ・ツアーズ」に使われて、人気を集めたらしい。

 確かに主観映像は臨場感があり、さらに途中にはちょっとしたコントが挟まれてコメディの要素もあるこの作品を見ると、人気を得た理由がわかるような気がする。

 ちなみに、「大列車強盗」(1903)の大ヒットにより、当時のアメリカの映画会社の多くは列車強盗ものの作品を多く作ったのだという。当時、内容の流用は映画界では日常茶飯事のことだったのだ。



「THE BLACK HAND」

 監督ウォレス・マッカッチョン

 イタリア人の肉屋に金を要求する脅迫状が届き、娘が誘拐される。だが、肉屋が通報した警官の手によって、肉屋に強盗にやって来た男は捕まり、誘拐された娘も助けられる。

 当時のニューヨークで実際に起こったという事件を元にしているという。当時のニューヨークはイタリア人移民が急増しており、そういった状況が背景にある。

 室内のシーンは舞台を撮影するような形式だが、屋外で撮影された実際のニューヨークの路地の様子は興味深い。現在の銀座を思わせる街並みだ。



(DVD紹介)

More Treasures From American Film Arch 1894-1931 [DVD] [Import]

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アメリカ国内のフィルム・アーカイヴ所蔵の映画の中から選出した貴重な作品群を集めた3枚組みDVD。

注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。