フランス パテ社の作品 1907年(3)
「THE POLICEMEN'S LITTLE RUN」
パテ社、フェルディナン・ゼッカ監督作品。
肉を盗んだ犬を大勢の警官が追いかけるが、いつの間にか犬に警官が追いかけられる羽目になる。
犬と警官の追いかけっこが、ロケーションとセットを駆使して空間の広がりを感じさせながら繰り広げられる。肉を盗んだ犬を不必要なほど大勢の警官が追いかけるというシチュエーションのおもしろさと、しまいには犬に警官が追いかけられるという展開のおもしろさに、ラストでは警官が肉をくわえたまま警官の帽子をかぶったショットという、犬の全面的勝利を謳うというギャグで終わる。
後のアメリカにおけるマック・セネット率いるキーストン社の人気の出し物となる「キーストン・コップ」を思わせる作品だが、追っかけのスピードや破壊力やドタバタの威力に欠ける。
その代わりにというのも何だが、この作品にはちょっとした映像トリックがある。床に書いたビルの側面の絵を警官たちが這って移動する様子を真上から撮影することで、壁をよじ登ったり降りたりすることを表現するというものだ。幼い頃、ドリフターズのコントなどで見たことのある手法が使用された最初期の例といえるだろう。
この作品は、人間が走る様子を撮影するだけで、エンターテインメントになりえることを証明している。後に、バスター・キートンやジャッキー・チェンがもっと工夫を凝らして私たちにそのことを教えてくれることになる。
「KIRIKI, JAPANESE ACROBATS」
セグンド・デ・チョモン監督
日本人の格好をした人々が様々なアクロバットを見せる。
江戸時代の日本人のような格好をしたフランス人たちが演じている。普通では不可能なアクロバットだが、床に寝ながら演じている人々を、真上から撮影するというトリックである。このシュールなアクロバットと、今よりもミステリアスに捉えられていた日本人という存在がマッチしたのだろう。
「THE DANCING PIG」
着ぐるみの豚と少女が歌って踊る。
ヴォードヴィルの出し物だったものを映画化したものらしい。豚の着ぐるみは目や鼻が動いたり、舌が伸びたりと、なかなかよく出来ている。
「I FETCH THE BREAD」
パンを買いに出かけた2人の男が、途中で酒場の誘惑に負けて、酔っ払ってしまう。
後にチャールズ・チャップリンの映画などでも使われる酔っ払いものの常道とも言える内容だ。こういった作品を見ると、ルーティンの内容にキャラクターで見事に色付けしたチャップリンの素晴らしさを確認することが出来る。
(DVD紹介)
「The Movies Begin - A Treasury of Early Cinema, 1894-1913」
初期の映画を多く見ることができる5枚組みのDVD。リュミエール兄弟、エジソン社、ジョルジュ・メリエスを始め、イギリスのブライトン派と呼ばれた人々など、日本ではなかなか見ることができない作品を見ることができる。
アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。
http://dvd.or.tv/
注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。