フランス ゴーモン社の作品 1907年

「LA COURSE A LA SAUCISSE」(1907)

 英語題「THE RACE FOR THE SAUSAGE」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督ルイ・フイヤード(アリス・ギイ?)

 ソーセージを奪った犬を、大ぜいの人々が追いかける。

 「追っかけ」は、初期の映画では人気のあったモチーフである。動きを捉える映像にとって、ぴったりの素材だったのだ。この作品はそうした「追っかけ」映画の1つで、もちろん不必要に大勢の人間が犬を追いかけまわり、転がりまわる。途中で、サーカスでライオンなどにジャンプさせて通すための輪が登場したりと、工夫もされている。


「LA GLU」(1907)

 英語題「THE GLUE」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ

 強力な接着剤を見つけた少年が、接着剤を階段やベンチなどに塗りつける。

 シンプルなコメディで、それなりに面白いが、設定以上の工夫は見られない。


「LE BONNET A POIL」(1907)

 英語題「THE FUR HAT」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ

 巨大な羽のついた帽子をかぶった兵士に食事をさせていたメイド。そこに主人の女性が帰ってきて・・・。この後多くの男女が入り乱れて、浮気がばれないように隠して・・・といったよくある展開が待っている。正直言って、ありがちな展開や演出はつまらない。だが、キャビネットに隠れた兵士の帽子についている羽が、キャビネットからはみ出てユラユラと揺れる様子には、間抜けな面白さがある。

 書き割りをバックにワンショットで演じられている点などから、舞台で使われたギャグなのではないかと感じられた。


「LE FROTTEUR」(1907)

 英語題「THE CLEANING MAN」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ

 掃除屋が床を磨きすぎたせいで、ツルツルになりすぎ、挙句の果てには床が抜けてしまう。

 床が抜けて、人々が落ちていくギャグは、他の作品と比べてセットに金がかかっている。映画が徐々に金を使うことができるようになってきた証拠でもあり、一方で金を使わないと他と差別化した作品を作り出せなくなってきた証拠とも言える。


「UNE HEROINE DE QUATRE ANS」(1907)

 英語題「A FOUR-YEAR-OLD HERO」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ(ルイ・フイヤード?)

 4歳の少女が、強盗を警官に通報したり、目の見えない男や酔っ払い3人組を危機から助けたりする。

 メイドと公園に行き、多くの人々を助け、家族の元に戻るまでの様子が淀みなく、物語られている。物語自体は平凡と言ってしまえばそれまでだが、語り方は成熟を見せている。


「LE LIT A ROULETTES」(1907)

 英語題「THE ROLLING BED」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ(ルイ・フイヤード?)

 車輪のついていると思われるベッドが、街中を走り回り、大混乱を招く。

 動きのある作品で、単純に見ていて楽しい。ベッドを止めようとするが弾き飛ばされてしまう数人の警官隊は、後のキーストン・コップを思い起こさせる。警官は権威の象徴で、無力に弾き飛ばされる姿は人々の心にスカっとしたものを与えることは、フランスも同じだったのだろう。


「LE PIANO IRRESISTIBLE」(1907)

 英語題「THE IRRESISTIBLE PIANO」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ

 マンションでピアノを弾く男。近所の住民たちは、苦情を言おうとするが、音楽に乗って踊りだしてしまう。

 楽しい作品。サイレント映画なのが残念な一方で、みんなが思わず踊らずにはいられない音楽は、聞こえないからこそ説得があるのかもしれない。


「SUR LA BARRICADE」(1907)

 英語題「ON THE BARRICADE」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ

 市街戦が行われている通り。母親のために牛乳を取りに来た少年は、兵士たちに射殺されそうになる。

 フランス革命を舞台にした作品だが、主人公は革命とは無関係に毎日の営みを行っている1人の少年だ。革命を舞台にしていながら、まったく無視しているかのような描き方に、ギイの批判精神を感じる。


「LE BALLON DIRIGEABLE “LE PATRIE”」(1907)

 英語題「THE DIRIGIBLE "HOMELAND"」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督アリス・ギイ

 飛行船が飛び立つ様子を撮影


「LE RECIT DU COLONEL」(1907)

 英語題「THE COLONEL'S ACCOUNT」 製作国フランス
 Société des Etablissements L. Gaumont 監督ルイ・フイヤード

 パーティの席で、かつての戦闘を身振りを交えて話し出した大佐は、徐々に興奮してきてパーティをぶち壊してしまう。

 話すうちに興奮する大佐のキャラクターの面白さもさることながら、興奮して身振りも大きくなる大佐から逃げ惑う周りの人々の動きが計算されており、動きのある楽しい作品となっている。DVDのクレジットを見ると、元々は舞台の出し物だったらしい。計算された動きを見せるのはそのためだろう。