D・W・グリフィスの作品 1911年(12)

「THE LIGHT THAT CAME」

 バイオグラフ社製作・配給 監督・脚本D・W・グリフィス

 ほおに傷を持つグレイスは、美しい妹たちが男性たちと楽しげに遊ぶ姿をうらやましく見ている。ある日、グレイスは盲目のミュージシャンと出会い、2人は恋に落ちる。ミュージシャンは、手術をすれば目に見えることが分かるが、手術費がない。グレイスは貯金を差し出そうとするが、目が見えるようになると自分の傷を見て愛が醒めてしまうのではないかと思い、悩む。

 グレイスの傷にクロース・アップすることがなく、最初何か汚れているだけかと思ってしまった。恐らく、数年後のグリフィスならば、クロース・アップをうまく使ったことだろう。

 演出面で見ると、取り立てて特徴がないこの作品は、グリフィス自身による美しいストーリーによって、感動的とも言える作品になっている。この作品の結末を逆にしたのが、チャールズ・チャップリンの「街の灯」(1931)や野島伸司脚本のテレビドラマ「世紀末の詩」の一エピソードである。ロマンティストのグリフィスは、ハッピー・エンドとして綺麗に終わらせている。

 リリアン・ギッシュやメアリー・ピックフォードのような処女性を持った少女ではなく、少し年を重ねた疲れを感じさせるルース・ハートを主演に据えている点も、この作品を美男美女のおとぎ話にはない魅力を持たせているように感じる。