ヴァイタグラフ社の作品 1911年

「HER CROWNING GLORY」

 アメリカ、ヴァイタグラフ社製作の作品。当時、大人気を得ていたというジョン・バニー主演のコメディ。

 ジョン・バニーという人物は今では忘れられた存在だが、当時は世界中で人気を得ており、1910年のデビューから1915年に急死するまで、150本以上の映画に出演したという(数本しか現存していないらしい)。

 デビューしたときにすでに40代後半だったバニーは、かなり巨体の白人男性で、あばた顔もあって1度見たら忘れられない風貌だ。この作品にも出演しているやせっぽちのフローラ・フィンチという女性との「デブとヤセ」のコンビで売っていたという。

 映画の内容は、妻に先立たれたバニーの小さな娘のやんちゃを直すために、バニーの妹が家庭教師を派遣する。バニーは家庭教師の美しい長い髪に惚れ、結婚を申し込む。父親を奪われておもしろくない娘が、家庭教師の長い髪を切ってしまうというもの。

 他愛もないといってしまえばそれまでだが、娘役を演じる少女のかわいらしさが映画を活気づけている。家庭教師の長い髪はあまり美しいと感じなかったのだが、当時の基準では美しかったのだろうか。切られたワカメのような髪は、ただそれだけで、ちょっとおもしろかった。



「A TALE OF TWO CITIES」

 製作国アメリカ ヴァイタグラフ・カンパニー・オブ・アメリカ製作 ジェネラル・フィルム・カンパニー配給
 監督・出演ウィリアム・ハンフリー 原作チャールズ・ディケンズ 脚本ユージーン・マリン
 出演モーリス・コステロ、フローレンス・ターナー、ジョン・バニー、ノーマ・タルマッジ

 チャールズ・ディケンズ原作「二都物語」の映画化。字幕で以後映像で語られることが説明されるタブロー形式で作られており、原作を知っていることが前提となっている。20分強で原作のあらすじを追った作品である。



「HIS OFFICIAL APPOINTMENT」

 製作国アメリカ ヴァイタグラフ・カンパニー・オブ・アメリカ製作 ジェネラル・フィルム・カンパニー配給
 監督・出演チャールズ・ケント 脚本キャサリン・カー 出演ハル・ウィルソン、ノーマ・タルマッジ

 政府に職を求めてやって来た大佐だが、アポイントを取ろうとしてもなかなか取れないが・・・。

 10分強の短い作品だが、大佐を演じるチャールズ・ケント(監督も兼ねている)の重厚なたたずまいだけで、多くの言葉を費やさなくとも、映画に重みを与えている。派手さはなくとも、映画がビジュアルで語ることの意味を感じさせる作品だ。