THANHOUSER社の作品 1911年

「ONLY IN THE WAY」

 THANHOUSER製作 モーション・ピクチャー・ディストリビューターズ・アンド・セールス社配給

 出演マリー・エライン

 足の悪い少女マリーは両親と住んでいる。おばあちゃんが一緒に住むことになり、喜ぶマリー。だが、マリーの母親は、おばあちゃんをうとましく思い、養老院に預けることにする。寂しいマリーは、おばあちゃんに会いに、松葉杖をつきながら養老院へと向かう。

 タンホイザー・フィルムは、舞台出身のエドウィンタンホイザーが設立した映画製作会社で、1918年に会社を閉じるまでに千本以上の作品を製作したという。タンホイザーは舞台から映画に転身した最初のアメリカ人とも言われている。

 老人問題を扱ったこの作品は、社会問題をえぐるというよりも、甘いセンチメンタルな物語に終始している。「タンホイザー・キッド」という愛称で親しまれたというマリー・エラインの可愛らしさと健気さが、甘い物語を彩っている。松葉杖をつきながら養老院に向かうマリーが、途中で松葉杖を落としてしまい、何度も転びながら必死に歩く姿は、胸をつくものがある。ちなみに、当時はまだ役者の名前がクレジットされることは一般的ではなかったが、マリー・エラインはその人気がからクレジットされたという。

 演出は常道的で、D・W・グリフィスのように物語を盛り上げる手段を駆使してはいない。だが、同じ1911年にグリフィスによって監督された、老人問題を扱った作品「WHAT SHALL WE DO WITH OUR OLD?」(1911)やこの作品を見ると、当時の映画が決して現実から目を背けていたわけではないことがわかる(この作品は、最終的には非常に甘いが)。