IMP社 メアリー・ピックフォード主演作品(1) 1911年

「THE DREAM」
 
 メアリー・ピックフォード主演。トマス・H・インスとジョージ・ローン・タッカー監督。カール・レムリが率いていたIMPの製作。

 メアリー・ピックフォードは1910年にバイオグラフ社から、IMPに移籍していた。その理由は給料とも、自分の人気の高くなっていたことを知ったピックフォードが自分の名前を表記するように求めたがバイオグラフ社に拒否されたからとも言われている。

 IMPは人気の高かったピックフォードとともに、当時のピックフォードの婚約者(すぐに結婚)だったオーウェン・ムーアと、トマス・H・インスも引き抜いていた。この作品で、ムーアはピックフォードの相手役を、インスは監督をつとめている。この作品は、移籍後2本目の作品だという。この後、ピックフォードは大量の作品(1911年だけで48作品に出演)に主演して、さらに人気を高めていく。

 夜遊びで帰りの遅い夫を待つメアリー。やっと帰ってきた夫は妻に暴力を振るい、ソファで寝てしまう。夫は、貞淑な妻だったメアリーが酒を飲み、タバコを吸い、皿を蹴飛ばして、カーテンを引きちぎり、男と夜遊びに出かける夢を見る。夢から醒めた夫は改心してメアリーに許しを乞うのだった。

 10分程度の1巻物で、「夢」という設定を使って、ピックフォードは貞淑な妻と奔放な女性という正反対の役柄を演じ分けてみせ、女優としての実力の片鱗を見せてくれる。このころはまだ、ピックフォードは大スターではなかった。この映画でもピックフォードを大スターにしたと言われる少女役ではなく、若妻を演じている。

 内容的にも、技法的にも取り立てて特徴的な作品ではない。当時19歳のピックフォードが演技力の片鱗を見せている点は見る価値がある。


「AS A BOY DREAMS」

 IMP製作 モーション・ピクチャー・ディストリビューターズ・アンド・セールス配給
 監督トマス・H・インス 出演メアリー・ピックフォード

 乗組員の反乱が起こった船から少年と少女は逃げ出す。流れ着いた島には海賊がおり、少年は反乱を起こした乗組員が持っていた宝の地図を渡して助かる。

 子供の冒険物語をダイジェストで見せるような作品。ピックフォードは鳴り物入りでIMPに移籍した割りには、この作品での存在感はあまり大きくない。


「ARTFUL KATE」(1911

 製作国アメリカ IMP製作 モーション・ピクチャー・ディストリビューターズ・アンド・セールス・カンパニー
 監督トマス・H・インス 出演メアリー・ピックフォードオーウェン・ムーア

 ケイトと付き合っているハミルトンは中尉としてキューバへ行くことになる。キューバにいる叔父からパーティに招待されたケイトは、現地の女性になりすましてハミルトンに迫り、愛を試す。

 バイオグラフ社に所属し、D・W・グリフィスの作品に出演していたピックフォードは、カール・レムリ率いるIMPで高給で引き抜かれる。一緒に引き抜かれたのが、監督のトマス・H・インスや極秘のうちに結婚していた夫で俳優のオーウェン・ムーアだった。この作品は、引き抜かれたメンバーがスタッフ・キャストを務めた作品である。

 よくあるストーリーをキューバに置き換えた作品だが、キューバならではの魅力は引き出せていない。固定で舞台を撮影するように撮られたカメラも、ピックフォードの魅力を引き出せていない。内容・技術共に、特徴が感じられない作品だ。


「IN OLD MADRID」(1911

 製作国アメリカ IMP製作 モーション・ピクチャー・ディストリビューターズ・アンド・セールス・カンパニー
 監督トマス・H・インス 出演メアリー・ピックフォードオーウェン・ムーア

 美しいメアリーは、ハンサムなスペイン人男性を紹介されて恋に落ちる。

 バイオグラフからIMPに移籍したピックフォードは、監督のトマス・H・インスや夫で俳優のオーウェン・ムーアらと共にキューバ行き、数本の作品に出演した。とはいえ、キューバの風景は活かされておらず、ストーリーや映画テクニック的にも見どころに欠ける。朗らかなピックフォードだけが、映画にさわやかな魅力を与えている。


SWEET MEMORIES」(1911

 製作国アメリカ IMP製作 モーション・ピクチャー・ディストリビューターズ・アンド・セールス・カンパニー
 監督・脚本トマス・H・インス 出演メアリー・ピックフォードオーウェン・ムーア

 娘のポリーに婚約者を紹介されたレティは、若かりし日の愛する人との日々を思い出すのだった。

 映画技法的にはシンプルで、思い出を絵巻物のように振り返っただけの作品である。だが、1つ1つ思い出の積み重ねは効果的で、1人の女性が重ねてきた年月を感じさせるに十分だ。ちなみに、この作品にはピックフォードの母や弟らも出演しているのに加え、この作品の中のレティの境遇(早くに夫を亡くす点)は、実際のピックフォードの母親と重なるという。こういった点が、この作品を野心的ではないが好感が持てる作品としているのかもしれない。


(ビデオ紹介)

Amarilly of Clothesline Alley [VHS] [Import]

Amarilly of Clothesline Alley [VHS] [Import]

 1918年のメアリー・ピックフォード主演作品。アメリカのビデオなので、もちろん英語。特典として、「THE DREAM」(1911)も収められている。

※日本製のビデオデッキでも再生できます。