エジソン社の作品 1912年(2)

「THE PASSER-BY」

 結婚式前夜。友人たちが集まり新郎を囲んでパーティが開かれている。余興に、通りがかりの1人の初老の男性を連れてきて、その男性に過去の話をしてもらう。結婚式前夜に相手の女性に結婚を破棄され、その女性のことが忘れられずに仕事でも失敗を繰り返し、没落していくという話だった。話が終わった初老の男性は、新郎がかつて結婚を破棄された女性の息子であることを知る。

 ストーリーもよく練りこまれた17分の物語は、「ヒッチコック劇場」のような小話的な面白さを十分に持っている。教訓的でもあり、運命の皮肉も感じさせるものでもある。

 セットの出来もよく、その後のサイレント映画期の作品と比べても、リアリティを保持しているように思える。

 演出面でも、初老の男性が語り始めるとカメラが男性の顔に近づいていき、クロース・アップとなったところで若い頃の男性の顔にオーバーラップしていくといった、現在でも使用される方法が使われている。

 また、初老の男性が始めて登場したときに、字幕で男性を演じる俳優(マーク・マクダーモット)の名前が紹介されていることも注目すべきであろう。かつて、映画俳優は観客に紹介されることはなかったが、この頃にはいわゆる「映画スター」が誕生しており、メアリー・ピックフォードといったスター目当てで映画を見に行く観客も増えていた。エジソン社もそういった「映画スター」に対する観客の需要に応えるようになっていた証拠といえる。

 Oscar C. Apfel監督作。




(DVD紹介)

Edison: Invention of the Movies [DVD] [Import]

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映画初期のエジソン社製作の映画を大量に見ることができる4枚組DVD−BOX。各作品についての解説(英語)もあり、かなり親切な作りになっている。

注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。