「FROM THE MANGER TO THE CROSS」

 アメリカ・カーレム社による作品。監督はシドニー・オルコット。

 イエス・キリストの誕生から死までを描いた作品。アメリカ映画初の長編映画(1時間強)の作品と言われている。

 聖書の一文が紹介され、続いてその内容が映像として展開されるというスタイルの作品。映像は基本的に、固定のカメラでワンシーン・ワンショットで撮影されており、非常に舞台的である。フランスのパテ社で製作された「Life and Passion of Christ(イエス・キリストの生涯と受難)」(1903−1905)と作り方としては同じである。だが、この作品は、パテ社が製作した作品と大きく違うところが1つある。

 この作品はエジプトやエルサレムといった実際にキリストが生きた場所で撮影されている。その点がパテ社の作品とは大きく違う。建造物、風景といったものがこの映画に大いなる雰囲気を与えることに成功している(キリストの時代はまだ砂の中に埋まっていたため、スフィンクスが登場するショットは史実的にはおかしいのだが)。

 数々の有名なエピソード(水をワインに変える、病気の人々を治す)を散りばめ、キリストの生涯を描いたこの作品だが、キリストについて知らない人が見たら理解することが難しいだろうと思われる。それでも、当時1巻もの(約15分)が中心だったアメリカ映画界の中で、長編映画として製作されたのは、キリストの生涯が他のどんな物語よりも多くの人々に知られたものだったからだろう。この後、D・W・グリフィスを始めとする映画人たちによって、物語を語る技術が革新され、観客がもともと知らない物語でも、理解し楽しめる作品が製作されていく。

 映画技法的にはつたない印象を受けるこの作品だが、その圧倒的な知名度を誇る「キリスト」という題材を得ることによって、長編として当時の観客を引きつけることに成功した(興行的にも成功したという)。この作品が製作されてから92年後の2004年、俳優で映画監督も努めるメル・ギブソンはキリストの受難を描いた「パッション」を製作・監督し、興行的に大成功を収める。キリスト教圏であるアメリカでは、今も昔も「キリスト」という題材は圧倒的なパワーを持っていることがわかる。



(DVD紹介)

「LIFE AND PASSION OF CHRIST」

 アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。

http://dvd.or.tv/個人輸入指南)
http://www.play-net.co.jp/movie/(輸入代行業者)
 
注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。