THANHOUSER社の作品 1913年

「THE EVIDENCE OF THE FILM」

 THANHOUSER製作 ミューチュアル・フィルム社配給

 ある株のブローカーの男が、借金を催促する知人に対して、策を練る。男は使用人に札束の入った封筒を見せておきながら、メッセンジャー・ボーイが運んでいる途中にわざとぶつかって、新聞の入った封筒と取り替えるのだった。だが、その様子は偶然に撮影していた映画に撮られていた。

 2001年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された作品でもある。

 内容としては、ちょっとした犯罪ものであるが、そこに映画への自己言及的な要素が入っている点が最大の特徴だろう。撮影されたフィルムが、実際に撮影されていたカメラと位置が異なっているといった点を指摘することができるが、そんなことはそれほど重要ではない。

 映画の撮影現場を垣間見れる点も興味深いが、それ以上に編集を行う工房の様子も舞台になっている点が珍しい。そして、そこで働いているのが、みんな女性たちである点についても、指摘がされている。1920年代に入って現在のハリウッドの基礎が築かれて大きな産業となる頃まで、映画は担い手の多くは女性であったことが、この作品には刻み込まれているといえる。


「AN AMERICAN IN THE MAKING」

 ヨーロッパから移民としてアメリカへやって来た青年は、製鉄所で勤めるようになる。その製鉄所では労働者の安全を守るために様々な工夫がされていた。青年は英語の教室の女性教師と親しくなり、やがて結婚する。

 当時、製鉄所で働く人々の労働災害が問題となっていた。この作品のスポンサーはU.S.スティールである。U.S.スティールは当時独占的な製鉄企業であり、労働災害の問題に取り組んでいることをアピールする必要があったという。

 製鉄所には当時多くアメリカへやって来ていた移民が従事していた。この作品の主人公も移民である。この作品は労働災害の防止にU.S.スティールが取り組んでいるというアピールと同時に、移民が安心して働ける国としてのアメリカも強調されている。

 機械で怪我をしないために組み込まれている安全装置の紹介のみならず、英語の分からない移民のため標識で危険な場所であることを示したり、英語教育も行っていたりと、移民を積極的に受け入れていた当時のアメリカならではの部分が多くある。