「TRAFFIC IN SOULS(暗黒街の大掃蕩)」

 IMP製作、ユニヴァーサル社配給、ジョージ・ローン・タッカー監督。

 女性を誘拐して売春させている組織の様子と、その組織に妹を誘拐された女性メアリーの様子と、婚約者の警官バークが妹を探して売春組織へとたどり着く様子を描く。

 当時発表されたニューヨーク市の調査を元に、売春(白人奴隷と言われた)の実態に迫るという社会派的な殻を被った作品である。この作品は、セックスを直接的に扱った最初の映画と言われている。映画では売春の様子が直接描かれたり、女性の裸が描かれたりするわけではないが、組織が行っているのが「売春」であることは明確にわかる。売春組織という(当時としては)センセーショナルな題材を扱い、サスペンス映画の味付けがされたこの作品は、5千700ドルの製作費に対して、売上50万ドルという大ヒットを記録したといわれている。ユニヴァーサルはこの後、社会問題を扱った映画を多く製作していき、独自の特色を打ち出していく。

 もう1点、この作品が特徴的なのは、長編であるということだ。1913年当時はまだ、長編の作品は珍しい時代にこの作品は6巻物(約1時間半)だった。時間が長くなったことで、組織の手口の紹介から、主人公のメアリーとバークを中心とした探偵劇までをじっくりと描くことに成功している。

 映画ではまず、売春組織の手口が末端から上層部まで描かれる。移民してきたばかりの不慣れな土地で不安を抱く女性たちに優しく声をかけて誘惑する様子や、各売春宿の主たちが元締めに上納金を納める様子などが描かれる。ここで手口が紹介されることによって、後に主人公といえる男女が麻薬組織に迫る際にスパイ映画のような魅力を持つことになる。

 とはいえ、映画としては全般的に平板な印象を受ける。同時にいくつかの場所での様子を平行して描く手法は、見ていて飽きがこないものの、かといって盛り上がりを見せるわけではない。売春組織の手口の紹介の映画ではなく(この映画で紹介される手口は正確性に欠けるという)、あくまでも売春組織をネタとした劇映画と見ると、もう少し盛り上がりがあってもいいのではないかとも思う。という感想は、あくまでも長編劇映画をたくさん見て、売春婦を扱った映画もたくさん見てきたから思うことであり、当時の人びとにとっては「売春婦」が扱われる作品はそれまでになく、さらには当時ちょうど話題となっていた調査結果を元にしており、しかも長編であったきているわけだから、話題にならないわけがなかったのだろう。

 この作品は、映画における「セックス」の力の強さを、人間の「セックス」に対する興味の強さを証明する作品と言えるだろう。さらには、「社会問題の暴露」を理由にして、セックスを描くという手法の萌芽の作品としても、注目すべき作品だ。この手法は、この後も取られていくことになる。



(DVD紹介)

Traffic in Souls [VHS] [Import]

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