「INGEBORG HOLM」

製作国スウェーデン スヴェンスカ製作 監督・脚本ヴィクトル・シェーストレーム

 夫に先立たれたインゲボルイ・ホルムは、救貧院に入り、子供たちを里子に出すことになる。ある日、まだ赤ちゃんの娘と再会したインゲボルイは、娘が自分のことが誰か分からないことにショックを受け・・・。

 初期スウェーデン映画界の代表的監督の1人であるシェーストレームが、評価された最初の作品と言われている。原作の戯曲の作者や主演女優を紹介する映像が冒頭に流されることから、当時のスウェーデンでは著名な戯曲家、役者だったのだろうと予想される。

 内容は、後の日本でも「母もの」と呼ばれて、日本国内でも多く作られる不幸な母親を主人公としたものだ。陳腐なメロドラマと一言で片付けてしまってもよさそうな内容だが、シェーストレームはスムーズに物語を進んでいき、悲劇性はしっかりと描き出されている。クロース・アップや編集といった映画的手法はそれほど効果的には使われておらず、ストーリーの進展に手紙を多用しているようにも思われるが、それは欠点とはなっていない。