キーストン時代のチャップリンの作品「ヴェニスにおける子供自動車競走」

　チャップリンが始めて浮浪者の格好で登場することで有名な作品。

　この作品は工夫されていて面白い。最初に、自動車競走のシーンに浮浪者の格好をしたチャーリーが自分を映してもらおうと邪魔をするところから始まる。途中で、カメラをパンして観衆を撮影しようとすると、途中にまたチャーリーがカメラの方を見ていて、パンするカメラについていくようにチャーリーが移動していく。ここまでは、ニュース映像の撮影中に目立ちたがりの人物が入り込んでしまったドキュメンタリー調で進む。

　後半は、撮影をしているカメラマンとチャーリーの様子をまた別のカメラが撮影しており、カメラに映ろうとするチャーリーと排除しようとするカメラマンのぶつかり合いが映し出される。

　チャーリーはひたすら目立ちたがりの人物を演じている。「浮浪者の格好」と書いたが、この作品では浮浪者かどうかはわからない。明らかに寸法違いの服を着ているが、服自体は綺麗で、目立ちたがりの変なおじさんという印象だ。チャーリー像はまだ完成していない（映画出演２作目だから、当たり前だ）。

　この作品も音楽だけのバージョンと、活弁入りのバージョンの２種類を見たが、活弁入りの方は細かくカットが割られ（上映段階で編集されたものとおもわれる）、「撮影中に出会った変なおじさん」的なこの作品が本来持つおもしろさは失われている。ラストでは、追い払おうとするカメラマンに最後っ屁をかますように、カメラの真ん前でしかめっつらをしてみせるという終わり方を見せる。

　ちなみに、ヴェニスとはカリフォルニア州のヴェニス・ビーチのことで、イタリアのヴェニスではない。

（ＤＶＤ紹介）

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