キーストン時代のチャップリンの作品「メーベルの奇妙な苦境(メイベルのおかしな災難)」

 メーベルとは、当時チャールズ・チャップリンが所属していたキーストン社で、コメディエンヌとして活躍していた女優メイベル・ノーマンドのこと。チャップリンがキーストンに入社したときには、すでに人気を得ており、この作品でも実質的な主役である。

 舞台はあるホテル。パジャマ姿のまま部屋から追い出されてしまったメーベルが、中年夫婦の泊まる隣の部屋に逃げ込むことで、様々な誤解が起こる。

 チャップリンは酔払いの役で、メーベルに絡み、後半でも誤解によってドタバタが起こる人々の中に飛び込んで話をややこしくする役柄。主役ではない。チャップリンは短編で多くの酔払い役を演じるが、この作品がその最初の作品ということになる。おなじみの格好をしているものの、まだそこには確固としたキャラクターは確立されていない。「酔っ払い役」として出演しているに過ぎず、パントマイムの至芸も見られない。

 メイベル・ノーマンドの作品はあまり見ることができず、その意味でも貴重な作品であるといえるが、何かするわけでもないので、コメディエンヌとしての魅力は感じられない。ただ1人だけアップでのショットがあることから、「女優」としてメーベルの顔に商品価値があったのだろうなという予想はできる。

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