D・W・グリフィスの作品 1914年(1)

「THE BATTLE AT ELDERBUSH GULCH

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。メイ・マーシュ、リリアン・ギッシュ出演。

 この作品は、グリフィスがバイオグラフの幹部には内緒にしたまま、2巻物として製作した作品であり、製作費が超過したこともあって会社側の反感を買い、一時お蔵入りにされそうになった作品である。そのため公開は遅れ、アメリカで「カビリア」(1914)が公開され、スペクタクルの興行価値が認識された後で公開された。

 西部の叔父に引き取られた少女のサリーは、買っていた犬をネイティブ・アメリカンに食べられそうになり、助けようとしてつかまる。そこに叔父がやってきてネイティブ・アメリカンを撃ち殺し、助けられる。叔父が殺したネイティブ・アメリカンは酋長の息子で、復讐のためにネイティブ・アメリカンによって、白人たちの街が襲われる。

 「THE MOTHERING HEART」(1913)がグリフィスのメロドラマの集大成としたら、この作品はスペクタクルの集大成といえるだろう。ネイティブ・アメリカンが白人の街を襲うシーンでは、ロング・ショットとミディアムショットを巧みに織り交ぜ、マクロとミクロの両面でスペクタクル・シーンを演出し、わかりやすくて迫力のあるシーンとすることに成功している。特に、軍隊が助けに向かう展開が加わると、家に立てこもって応戦する白人たち、襲うネイティブ・アメリカン、救出に向かう軍隊と三者三様の様子が見事に描き分けられ、映画を盛り上げる。しかも、家に立てこもる白人たちの様子は、銃を外に向けて撃つ男たちの姿のみならず、怯える女性たちの様子なども描かれ、さらには外に置き去りになった赤ん坊を主人公サリーが助けに行くというサブ・エピソードまで加わっている。

 ネイティブ・アメリカンが犬を食べるという描写には首を傾げたくなるが、そこは映画のメインではないので、置いておこう。

 主人公を演じているのは、メイ・マーシュである。この作品で少女を演じている彼女は、「ホーム・スイート・ホーム」(1914)では、ちょっとハスッパな感じの女性を演じている。両方とも見事に演じており、見比べて見ると、彼女の演技力がわかるというものだ。

 グリフィスのスペクタクルの演出が、習熟していることを感じさせる作品だ。「国民の創生」(1915)に向かう準備はすでに出来ている。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

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 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。