「ポーリンの危難」

 パール・ホワイト主演、パテ・フレール製作、ジェネラル・フィルム配給

 「連続映画」というジャンルが当時流行していた。1本で完結するのではなく、同じキャラクターが同じようなシチュエーションで「続く」映画のことだ。1本20分程度だったという。喜劇の短編とは少し違う。たとえば、チャールズ・チャップリンの短編は、確かにチャーリーというキャラクターが毎回登場するものの、前の作品に登場したチャーリーと次の作品に登場する人物は同一人物とは描かれていない。まるでパラレル・ワールドのように、チャーリーというキャラクターが時間も空間も別の場所に存在しているかのようだ。対して、「連続映画」は同じキャラクターが同じ世界に登場して続いていく。

 「ポーリンの危難」は「連続映画」の代表例としてよく名前を挙げられる作品だ。冒険好きな女性ポーリンが、財産を狙われて毎回命を狙われ、恋人のハリーが助けるという展開が繰り返される。船が爆破されそうになったり、インディアンに命を狙われたり、カーレースで危険な目にあったり、地下室に閉じ込められたりと、様々な工夫を凝らされ、ポーリンは毎回命を狙われ、そして助けられる。

 それぞれのエピソードを今見て楽しめるかというそれほど楽しめないかもしれない。ストーリーもアクションも単純だからだ(インディアンが登場するエピソードは少し捻りがきいている)。なんとなく全編に漂う間抜けな雰囲気(策略に気づかないポーリンとハリーや、まわりくどく命を狙う悪役など)は、「連続映画」を語るときによく使われる「スリリングな展開」とは遠く隔たっている。

 それでも、「ポーリンの危難」を見ると、後にお約束となる「危険な状況」がこの頃から使われていたことを知ることができるだろう。たとえば、インディアンのエピソードで転がる巨大な石から逃げるというシチュエーションは「レイダース」(1981)のオープニングに踏襲される。地下室に水が入り込むというシチュエーションも、多くの作品で見たことがあるだろう。

 工夫を凝らされた危難の数々を毎週生み出す(オリジナルは20エピソードだという)という方法は、同時に危難の方法を考え出すアイデア勝負でもあったことだろう。この後、映画はこれらのアイデアを捻り、見せ方を変えるなどの工夫を凝らして、より楽しめるように観客に提示していくことになる。私たちが見てきた様々なアクション映画やサスペンス映画に詰め込まれたアイデアの原石ともいえるものが、「ポーリンの危難」にはある。


■関連サイト
映画スクエア「インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》」

ポーリンの危難 [VHS]

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