セシル・B・デミル監督「THE VIRGINIAN」

 セシル・B・デミル監督・編集、ダスティン・ファーナム出演。
 ジェシー・L・ラスキー・フィーチャー・プレイ製作、フェイマス・プレイヤーズ・ラスキー、パラマウント配給

 ヴァージニアンと呼ばれる陽気で、気さくで、正義感の強い西部の男。古くからの友人であるスティーヴが、悪党のトランパスにそそのかされて牛泥棒に参加する。スティーヴを捕まえたヴァージニアンは、苦渋の決断でスティーヴを縛り首にした後、トランパスを追う。

 セシル・B・デミルが初監督し、アメリカ映画初の本格的長編映画と言われる「スコウ・マン」に続いて、デミルが監督した作品。主演も「スコ・ウマン」と同じダスティン・ファーナムが務めている。「スコウマン」がそうである通り、この作品も有名な舞台のヒット作を映画化している。ちなみに、デミルは「DIRECTED BY」ではなく、「PICTURISED BY」と表記され、ヒット劇の「映画化」を行った人物であるとされている。

 舞台劇だからかどうかまではわからないが、ストーリー上の見せ場ははっきりしている。古くからの親友であるスティーヴを、主人公のヴァージニアンが縛り首にしなければならなくなるという展開がそれだ。デミルは、スティーヴを逮捕してから、縛り首になるまでを比較的ゆったりと、じっくりと描いている。二人が向かい合って座っていると、その間に二重写しでかつて仲がよかったころの映像が映し出されて、二人がその映像を見つめるという、非現実的だが二人の心情がよく伝わってくるシーンも用意されている。いざ、縛り首になるシーンでは、直接縛り首になったスティーヴの姿を見せるのではなく、影でそのことを表現して見せ、直接的にみせるよりも叙情的なシーンとなっている。

 大きな見せ場を用意しておいて、その他にも「西部の楽しい生活」を感じさせるヴァージニアンによる様々ないたずらや、勧善懲悪ドラマに付き物の悪者トランパスと善玉ヴァージニアンによる戦い、そしてヴァージニアンと東部からやってきた女性教師との恋といった、常道的なエピソードを組み合わせて、しっかりとした構成となっている。この構成が、後の西部劇にも踏襲されていくものであることは、ストーリーの安定性(人びとが受け入れられやすいもの)によるものだろうと思われるが、そうしたストーリーを映画に選んだデミルらの着眼点の確かさが、彼らの映画界での成功へとつながったのだろう。大衆の興味を読む力は、デミルの作品の以後の軌跡−スペクタクル作からセックス・アピールを盛り込んだ社交劇、聖書劇や史劇−を見ればよく分かるだろう。

 当時スターだったというダスティン・ファーナムは、正直あまり魅力を感じないが、気さくな演技もシリアスな演技もこなしてみせる点は評価できるだろう。「スコウ・マン」もそうだが、デミルは長篇をうまく編集してストーリーがスムーズに進むように構成している。この作品は、D・W・グリフィスの「国民の創生」(1915)より前に公開された作品である点に触れておきたい。「国民の創生」のみによって、グリフィスによってのみ、映画の話法が完成したわけでは決してないということが、この作品を見ればわかる。