エッサネイ時代のチャップリンの作品「チャップリンの拳闘」
愛犬と共に貧しい生活をするチャーリーは、ボクサーのスパーリング・パートナーの仕事を得る。グローブに馬の蹄鉄を入れて、ボクサーをノックアウトしたチャーリーは、代わりにタイトルマッチに出場することになる。試合は、チャーリーの愛犬が試合相手の尻に噛み付いたりして収拾のつかない状況となる。
冒頭、チャーリーと愛犬が1本のソーセージを分け合うシーンから始まる。このシーンが効いてくる。苦労を共にする夫婦のような趣のこのワンショットによって、後半でチャーリーのボクシングの試合を見ている犬の表情が、チャーリーのことが心配で心配でたまらないように見えてくるのだ。犬がチャーリーの対戦相手の尻に噛み付くに至っては、おもしろさと共にそのいたいけさから感動する覚えてくる。なんとなく、「ロッキー」(1976)のロッキーとエイドリアンのような関係を思わせたりもする。
チャールズ・チャップリンが、これほどうまく物語を語っている作品は初めてだ。といっても、上記以外は物語を効果的に語るという点に配慮されているとはいえないのだが。
ボクシングのシーンの珍妙さは、後年の「街の灯」(1931)ほど練られてはいないが、それでも当然おもしろい。
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