エッサネイ時代のチャップリンの作品「アルコール夜通し転宅(酔いどれ2人組)」
チャーリーとベンの酔払い2人組は、高級レストランやホテルでドタバタを繰り広げる。
これまでの荒いところが多いスラップスティックとは異なり、レストランのシーンでは工夫に凝らされたドタバタを見せてくれる。隣に座る女性がチャーリーのひざに寄りかかろうとするのをチャーリーがすかすギャグがその代表例だろう。
ホテルでは、隣に住むカップルの女性が犬を追いかけてチャーリーの住む部屋にやってきて、男に浮気を疑われるという展開になる。この展開はキーストン時代の「メーベルの奇妙な苦境」(1914)と展開がまったく同じだ。ここでのドタバタは、レストランのドタバタと比べるとキーストン的な荒さが見られる。
ベン・ターピンがチャップリンの相棒として出演していて、チャップリンとなかなか息の合ったところを見せてくれる。酔っ払った2人のレストランでの行動のおもしろさは、後年の「街の灯」(1931)の2人を思い起こさせる。また、ベンがチャーリーにレンガで頭を叩かれて気絶するシーンでは、その動きのおもしろさから一瞬だけ、チャップリンからベンが主役の座を奪っている。ベン・ターピンはこの作品の後、チャップリン作品では目立った出演をしなくなるのだが、その理由の一つにチャップリンが食われることを嫌ったのではないかと思わせるほどだ。チャップリンは自らが完全な主役でなくては気に食わなかっただろうから、少しでのターピンの方が目立っていることは許せなかったことだろう。
ちなみに、役者といえばこれからチャップリン映画に出演していくエドナ・パービアンスが初めて姿を見せている。ターピンとは異なり、エドナは目立ちすぎずにヒロイン役を演じていく。
チャップリンは小道具を効果的に笑いに使用する。それは、バナナの皮を滑るきっかけに使うようなタイプではなく、小道具を一瞬の別のものとして使い(使おうとし)笑いを取るのだ。この作品でも、植物の茎はチャップリンにかかると歯ブラシになるし、電話機は水道の蛇口と間違われる。
単純なドタバタから、チャップリン流の笑いが加えられているし、共演のベン・ターピンも面白さを加えている。この作品はおもしろい。
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