キーストン社の作品「FATTY'S NEW ROLE」

 キーストン社製作 監督・出演ロスコー・アーバックル

 浮浪者のファッティ。常連客がいたずらで「3時に爆弾が爆発する」というメモを残したバーに、ファッティが丸いチーズを持って入ってくる。チーズを爆弾と思った店主たちは走って逃げ出してしまう。

 ファッティの浮浪者役は珍しい。チャールズ・チャップリンが演じそうなキャラクターだ。チャップリンの浮浪者が様々な「芸」を見せてくれる、只者ではない浮浪者であるのに対して、ファッティの浮浪者は本当に浮浪者に見える。ファッティは良くも悪くも、「芸」よりも存在感で見せるタイプなので、浮浪者役を演じると(しかも、役を見事にこなすと)、浮浪者としての存在感が前面に出てくる。

 アーバックルの浮浪者役が好きか嫌いかは個人によるだろうが、この後のアーバックルがいつもの気のいい中産階級の役柄が多いことを考えると、当時の観客にはあまり受けなかったのではないだろうか?個人的にも、アーバックルの浮浪者役はコメディとして考えると少しリアルすぎるように思える。リアルすぎて、アーバックルならではの個性が打ち消されているような感じを受けた。