キーストン社の作品「FATTY AND MABEL AT SAN DIEGO EXPOSITION」

 キーストン社製作 監督・出演ロスコー・アーバックル 出演メイベル・ノーマンド主演

 サンディエゴで開催されている博覧会にやってきたファッティとメイベルの夫婦。ファッティはメイベルを置いて、他の女性の後を追いかける。

 実際にサンディエゴで開催されていた博覧会に出かけていってロケ撮影された作品。即興が多かったキーストン社は、その時々にスタジオからそれほど遠くない場所で開催されているイベントを見逃さず、撮影を行っている。チャールズ・チャップリンが浮浪者の格好で初めて登場した作品といわれる「ベニスの自動車競走」(1914)も、実際のイベントを活用して撮影された作品だ。

 繰り広げられるのは、いつもと同じドタバタなのだが、博覧会でのロケ撮影がいつもとは違う味付けとなっている。何よりも、エキストラが大量にいる。博覧会を見に来ていた一般の人々だ。しかも、一般の人々はあからさまにファッティとメイベルの演技の様子を意識してみている。そのため、「多くの観衆に見守られながらドタバタを繰り広げるファッティとメイベル」とでも言ったものとなっている。

 チャップリンが登場している。といっても、チャップリン自身ではなく、チャップリンの格好をしたそっくりさんである。この当時、チャップリンはキーストン社を去り、エッサネイ社に移籍していた。このことからも、この作品がお祭り的な作品であることがわかる。

 使えるものは何でも使い、その好機を逃さないというキーストン社の性格が伝わってくる作品だ。