キーストン社の作品「WHEN LOVE TOOK WINGS」

 キーストン社製作 監督・出演ロスコー・アーバックル 出演アル・セント・ジョン

 1人の女性を巡って、ファッティとライバルが争っているところに、アル・セント・ジョンがやって来て女性を奪いそうになる。ファッティは女性を連れて飛行機に乗って逃げ、ライバルとアルや女性の父親が呼んだ警官たち(キーストン・コップ)が、自動車や自転車でファッティを追いかける。女性を連れ出すことに成功したファッティだが、いざ牧師の前で結婚の宣誓の段になって、女性がカツラを被ったかなり年上の女性であることが分かり逃げ出す。

 いつものキーストン社製作の追っかけコメディのストーリーだが、大きく違う点が1つある。それは、追っかけに飛行機が使われていることだ。ファッティが乗っていることになっているが、そこは飛ぶ飛行機を撮影したロング・ショットと、セットで撮影されていると思われるファッティが飛行機に乗る姿のメディアム・ショットの組み合わせで処理されている。とはいえ、これまでのキーストン社の作品のこじんまりとしたイメージからすると、かなり大規模な撮影となっている。

 キーストン社は、段々とアイデアに詰まるようになり、ギャグを生み出すセットや装置が大がかりになっていったと言われているが、この作品はそんな大掛かりになり始めた作品の1つなのかもしれない。

 残念なことに、飛行機というアイデアが先行したためか、ファッティのパワーやアル・セント・ジョンのスピードといったそれぞれの魅力が発揮されていないように感じられる。

 とってつけたようなラストは果たして必要だったのだろうか?それまでに何の複線もなく、急に若いと思われていた女性は実は老けていたと言われても、戸惑うばかりである。キーストン映画の本領は、このようなツイストではなく、とことんまで突き進む混沌にあるように思うのだが。