キーストン社の作品「FATTY'S PLUCKY PUP」

 キーストン社製作 監督・主演ロスコー・アーバックル

 ファッティは犬を捕まえる業者に捕らえられそうになっている犬を助ける。恋人を悪者に捕らえられたファッティは、愛犬とともに恋人を助けに向かう。

 前半はいつものアーバックル映画と言ってもいいだろう。火事を起こしてしまうファッティが、まったく慌てずにカップに注いだ1杯の水で火を消そうというギャグは、後にも繰り返される名ギャグといってもいい。

 後半は、実際にアーバックルの愛犬だったというルークが活躍を見せる。恋人を助けるのは、ファッティというよりは愛犬の活躍によるもので、ファッティの影は薄い。後半の展開は「ローヴァーに救われて」(1905)を思わせる内容で、そのためもあってこの作品は、アクが少なくてどこかさわやかな作品となっている。

 とはいえ、アル・セント・ジョンを始めとする悪役やおなじみのキーストン・コップはアクが強い。ファッティに金を奪われたことに腹を立てて、ファッティの恋人を射殺しようとする悪役はやりすぎのように見えるほどアクが強い。しかも、3時になると自動的に発砲される装置でファッティの恋人を殺そうとするが、そこにはまったく意味はない。

 この作品には、車同士のクラッシュ・シーンがある。何でもないように見えるが、キーストン社におけるドタバタの規模が大きくなっている印象を受ける。当初は、撮影所の周辺でちょっとしたドタバタを撮影しただけでも観客に受けていたキーストン社の作品は、アイデアの不足などから徐々に派手になっていったという。この作品にもその一端が感じ取れる。