キーストン社の作品「FATTY'S TINTYPE TANGLE(デブ君の奮闘)」

 キーストン社製作 監督・主演ロスコー・アーバックル

 ファッティは妻の母親にこき使われるのが嫌になって家を出る。そこで、誤解から妻に手を出されたと思い込んだ男ケネディに追われる破目に陥る。

 2巻物であることもあり、ストーリーにある程度の配慮がされている。それまでのアーバックルの作品は、ドタバタに理由はあまりなかった。この作品では、写真家によって撮られた写真が「原因で」誤解が生まれるし、ファッティが酒を飲んでいたことが「原因で」警官に殴られる。これまでのキーストン映画があまり考慮に入れられていなかった「原因」がこの映画にはある。アーバックルの映画が少し変化して来ていることがわかる。

 アーバックルは家の中を逃げ回り、窓から外へ逃げていき、電線上で綱渡りまがいのことまでやってみせる(スタントと思われるが)。単純に蹴ったり殴ったりというドタバタではなく、舞台を生かしたドタバタが速いペースで展開される。ペースの速さがこの映画の特徴で、アーバックルを助けるために妻が乗る馬車は、あまりに速く走りすぎたために転倒してしまう。

 2巻物(30分弱)であること、妻や妻の母親にいびられるというファッティの設定、一軒家を使って縦横無尽に繰り広げられるドタバタ、フライパンの返しといったアーバックルのちょっとした技・・・ファッティ・アーバックルのコメディがある程度完成しているように感じられる作品だ。この後、アーバックルはメトロ社に移った後も、この作品と同じようなタイプのコメディを作っていき、その流れはバスター・キートンにも受け継がれていく。