映画評「TRILBY」

 製作国アメリカ エキターブル・モーション・ピクチャー・コーポレーション製作 ワールド・フィルム配給
 監督モーリス・トゥルヌール 原作ジョルジュ・デュ・モーリア 脚本E・マグナス・イングルトン
 編集クラレンス・ブラウン 美術ベン・カレ
 出演ウィルトン・ラッケイ、クララ・キンボール・ヤング、ポール・マキャリスター、チェスター・バーネット

 催眠術を使うことができるスヴェンガリは、歌手志望のトリルビーに催眠術をかけて、誰もが聴き惚れる歌声で歌わせて大金を得ることを思いつく。

 ジョルジュ・デュ・モーリアの原作は、舞台化もされ、当時話題となっていた。そのため1910年代にはいくつかの映画化作品が作られた。この作品はその1つ。1931年には、ジョン・バリモアがスヴェンガリを演じた「悪魔スヴェンガリ」も作られている。

 基本的には舞台を撮影したようなスタイルで、当時スターだったクララ・キンボール・ヤングのクロース・アップも、催眠術を使う時のスヴェンガリのクロース・アップもない。また、「悪魔スヴェンガリ」では、どこかスヴェンガリの悲恋を思わせる部分もあったが、この作品はどのキャラクターとも等間隔に作られており、ストーリーをなぞっただけという印象を受けた。

 鏡の使い方など、1つ1つのシーンを見るときちんとした絵作りがされているように感じられるトゥルヌールの演出だが、スターの使い方には冴えが感じられない。製作された年代から考えると滑らかにストーリーを語っているだけで上出来とも言えるが、当時ナンバー1のスターだったヤングの実力が感じられない作品となっているのは残念だ。