映画評「HYPOCRITES」

 製作国アメリカ ホバート・ボズワース・プロダクションズ製作 パラマウント・ピクチャーズ配給
 監督・脚本・製作ロイス・ウェバー 製作フィリップス・スモーリー 撮影ダル・クラウスン、ジョージ・W・ヒル
 出演コートネー・フート、マートル・ステッドマン、ハーバート・スタンディング、アデール・ファリントン

 信仰心の厚い牧師は、町の人が自分の説教を真剣に聞いてくれないことに絶望している。牧師は、真実を彫像にしようとした中世の司祭の夢を見る。

 ロイス・ウェバーはサイレント期に活躍した女性映画監督である。初めて長編映画を監督した女性と言われ、彼女の後しばらく女性が映画監督として活躍する場は与えられなかった。ウェバーは、この作品のような社会的メッセージを込めた作品を、しっかりとした演出力で送り出し、議論の的になったと言われている。

 この作品は、説教臭い作品である。享楽的に生きる人々への戒めがメッセージだ。だが、ウェバーの演出は非凡だ。

 「真実の女神」という形で女性の裸が映像化されている。女性の裸が映画になることなどもっての他だった当時において、公開にまで至った(アメリカの一部地域では禁止となったらしい)のは、ひとえに映画に込められたメッセージのためだろう。リスクを負う映像を入れ込んでいるところに、ウェバーの野心を感じる。物語は、現在と中世をいったり来たりして、時代を超えて登場人物を動かす。今見ても複雑な構成もまた、ウェバーの野心を感じさせる。

 内容は堅苦しい作品だが、それ以上にロイス・ウェバーという今では忘れられた人物忘れられるには惜しい人物であることが、この作品を見るとよく分かる。