イタリア映画の作品群 1916年

 イタリアでは、ファウスト・サルヴァトーリの詩「苦悩の歌」を題材とした史劇である「クリスタス」(1916)が、興行的に成功を収めたといわれているが、スペクタクル映画は、戦争による物資の不足から数が減っていった。

 「火」3部作(1916)は「カビリア」(1914)のジョヴァンニ・パストローネが監督した上流階級のメロドラマである。ダンヌンツィオの同名小説の映画化ではなく、ピエロ・フォスコ(パストローネの変名、「火」で初使用)のオリジナル脚本だった。古い風変わりな館における、身分を秘した公爵夫人と若き画学生との恋愛を耽美的に描いた内容。官能的であったため検閲で公開禁止になるところだったが、パストローネが削除して公開されたという。主演の公爵夫人を、ピナ・メニケッリが貴婦人的な美しさで演じて、「悲運の女性」としてのスターとなったという。

 メニケッリ主演作では、「ヴェリズモ(真実主義)」の代表的作家であるジョヴァンニ・ヴェルガ原作「王虎」(1916)が、ジョヴァンニ・パストローネ監督、フェボ・マリ共演で製作されている。だが、自然主義タッチの作品ではなかったと言われている。

 メニケッリはこの後、ローマのリナシメント・フィルム社の社長カルロ・アマートと結婚し、1924年に引退している。