ハロルド・ロイド出演作品「LUKE’S MOVIE MUDDLE」

 ローリン・フィルム製作 パテ・エクスチェンジ配給
 出演ハロルド・ロイド 製作・監督ハル・ローチ

 映画館の支配人であるリュークは、大勢やって来たお客さんをさばくので精一杯。そんな中でも、美人の女性を口説いたりすることも忘れない。しまいには、パイプをポケットに入れた男性の服が燃えて火事となり、映画館内は大混乱に陥る。

 当時、ハロルド・ロイドは「ロンサム・リューク(Lonesome Luke)」というニックネームのキャラクターを演じていた。後の眼鏡をかけた気の弱い好青年ではなく、チャールズ・チャップリンが演じたキャラクターに似た髪形とチョビ髭と、チャップリンに似た服(チャップリンはダボダボだが、長身のロイドはピチピチだ)を着て演じられている。動きなどはチャップリンとは異なるものの、見た目はチャップリンの影響を受けていることは明かだ。他にもチャップリンの模倣をしたコメディは多く作られており、当時のチャップリンの影響力の大きさを物語っている。ロイドがチャップリンに似たキャラクターを演じたリュークのシリーズはヒットしたというから、なおさらだ。

 10分という短い時間もあり、映画館を扱った細かいギャグで一気に楽しませてくれる。リュークが婦人方の帽子をむしり取ったり、おしゃべりを止めない女性の口をふさいだりといったマナーに関するギャグは、当時の映画館の様子の一端を教えてくれる(マナーに関する映画は、D・W・グリフィスの短編にも見られる。また、現在でも本編上映前に挿入されている)。

 リュークのシリーズは、1943年の火災により、多くの作品が残念ながら失われてしまっており、全体を今見通すことはできない。この作品だけを見ると、新鮮味やオリジナリティには欠けるものの、プロットや細かいギャグやテンポのよさで見せる、なかなか楽しめる作品なのだが。