映画評「ドーグラスの飛行」

 製作国アメリカ 原題「AMERICAN ARISTOCRACY」
 ファイン・アーツ・フィルム・カンパニー製作 トライアングル・ディストリビューション配給
 監督ロイド・イングラム 脚本アニタ・ルース 出演ダグラス・フェアバンクス、ジュエル・カルメン

 昆虫収集家のカシアスは、女性の帽子が落ちないように止めるピンを発明したヒックスの娘ジェラルディンと出会い、恋に落ちる。人のいいカシアスは、同じくジェラルディンに恋をするホートンに頼まれて、飛行機を飛ばせて見せたりするが、ホートンは火薬をメキシコに売って大もうけしようと企んでいた。

 明るくさわやかで、ストレートなフェアバンクスらしい作品。フェアバンクス作品の特徴である、身体能力の高さをさらりと見せる部分も盛りだくさんだ。軽やかにフェアバンクス演じるカシアスが柵を乗り越える姿も、その前にホートンが乗り越えるのに苦労する姿を見せることで、演出的にも強調されている。

 カシアスの人柄もフェアバンクス的だ。昆虫を捕るのに夢中になったり、恋に一途になったりといった純真さ。犯罪が行われていると知ったら身をていして止めようとする正義感。この後に作られるフェアバンクス映画にも共通する、フェアバンクスが信じるアメリカ人像が嫌みなく表現されている。

 「ドーグラスの飛行」は、この後多く作られるフェアバンクス映画の雛型のような作品だ。より工夫され、より変化が加わって行くものの、フェアバンクスが表現したかった爽やかな一本気が、ここにはある。