ヴィクトル・シェーストレームの「波高き日」とスウェーデン映画

 スウェーデンではヴィクトル・シェーストレームが、ヘンリック・イプセンの戯曲の映画化である「波高き日」(1917)を監督している。

 ナポレオン戦争時に、餓えた妻子に食料を運ぶために、イギリスの海上封鎖網を破ろうとした主人公はイギリス海軍に捕まる。5年後、釈放された主人公は妻子がすでに餓死していることを知る。主人公は、偶然にも漂流する小船を発見する。そこには自分を捕らえたイギリス海軍将校と家族がいた。主人公は、死んだ妻子の復讐しようとするが、将校らに哀願されて救助する。主人公が餓死した妻子のことを嘆く海辺のシーンでは、波濤が彼の不幸や怒りの象徴として描かれていたという。

 シェーストレームは俳優としても活躍しており、モーリッツ・スティルレル監督のコメディである「トーマス・グラールの最良の映画」(1917)に出演している。スター脚本家のトーマスが、金持ちの令嬢にからかわれながら愛を得るという内容で、シェーストレームは主人公のトーマスを演じた。好評で続編の「トーマス・グラールの最良の子供」(1918)も作られた。

 スウェーデンでは、ヴィクトール・ベルイダールによってアニメ映画も作られていた。ベルイダール実写とアニメを組み合わせた先駆的な作品の「肖像画を頼んだが」(1917)を生み出している。



(映画本紹介)

映画史を学ぶクリティカル・ワーズ

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無声映画芸術の開花―アメリカ映画の世界制覇〈1〉1914‐1920 (世界映画全史)

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