グロリア・スワンソン主演作「TEDDY AT THE THROTTLE(雨中の逃亡)」

 キーストン社製作 トライアングル・ディストリビューション配給
 出演グロリア・スワンソン ボビー・ヴァーノン ウォーレス・ビアリー

 グロリアはボビーを愛している。ボビーもグロリアを愛していながらも、他の女性にも惚れてしまう。グロリアの後見人は、グロリアに多額の遺産が入ることを知ってグロリアに求婚する。

 少し前までのキーストン社のコメディは、アクの強いキャラクターによる大げさなドタバタが特徴的だったが、この作品は少し違う。ボビーを演じているボビー・ヴァーノンがかなり小柄なくらいで、チャールズ・チャップリンやロスコー・アーバックルのアクの強さと比べたら特徴にもならない。

 アクの強いキャラクターの代わりにこの作品にあるのは、普通の人物たちが繰り広げるテンポの速い現実的なドタバタだ。嵐の吹き荒れる中、自動車と自転車と徒歩で繰り広げられるドタバタは、大雨と強風とぬかるむ道といった現実的な状況に巻き込まれる普通の人物たちのおもしろさがある。悪者によってグロリアが線路に結び付けられてからのサスペンスもテンポがよい。

 線路に結び付けられたグロリアが、それまでに何とか掘った穴に身を沈めて、列車に轢かれるのを回避するシーンがある。このシーンでは、ギリギリまで列車を待って身をかがめる危険なスタントを見ることが出来る。CGもなかった時代で、二重露出にも見えなかったので、実際に撮影されたのだと思われる。グロリア・スワンソン自身が演じたかどうかまではわからなかったが。

 途中には、小柄のボビー・ヴァーノンが大柄な女性との非現実的な動きのダンス(おそらくピアノ線で吊られている)を見せてくれるなど、楽しく飽きることがない作品だ。

 スワンソンはこの後のセシル・B・デミル監督作の役柄とは異なった魅力を見せてくれる。こちらのスワンソンも魅力的だ。ちなみに、共演しているウォーレス・ビアリーとは後に結婚(その後離婚)する。

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