映画評「ドーグラスの月の世界」

 原題「REACHING FOR THE MOON」 製作国アメリ
 製作ダグラス・フェアバンクス・ピクチャーズ 配給パラマウント・ピクチャーズ
 監督・脚本ジョン・エマーソン 製作・出演ダグラス・フェアバンクス

 ボタン工場で事務の仕事をしているアレクシスは、いつも大きなことをしたいと逞しい想像力を働かせている。しかし、想像力が過ぎて仕事が手につかなくなってしまったアレクシスは、会社をクビになってしまう。ある朝アレクシスが起きると、2人の男がやって来て、ヨーロッパのある国の王族の生き残りだと告げる。

 タイトルから、単純に月に行く話だと思って見たら、いつも月に行くことを夢見ている男の話だった。月に人類が到達する半世紀も前に作られた作品であり、タイトルだけで時代を感じる。

 元気で想像力や野心が豊かなキャラクターは、フェアバンクスの十八番と言ってもいい。この作品では、そんなフェアバンクスのキャラクターを生かしつつ、「しっかりと地に足をつけて生きなさい」というメッセージも込められている。目覚めたアレクシスがニューヨークを駆け抜けるシーンが印象的だ。しっかりと自分の両足を使って走るアレクシスの姿は、フェアバンクスのエネルギーがしっかりと現実と結びついているかのようだ。

 この頃のダグラス・フェアバンクスの映画は、まだ私たちに近い存在である。私たち知っているスーパーヒーローとしてのフェアバンクスではない、そんなダグの活躍は見ていて楽しい。