早川雪洲主演作「THE SECRET GAME」

 ジェシー・L・ラスキー・フィーチャー・プレイ・カンパニー製作 パラマウント配給
 監督ウィリアム・C・デミル 出演早川雪洲

 第一次大戦時のカリフォルニアが舞台。東側よりドイツ軍を攻めるためにアメリカ軍は援軍を送ろうとしていた。その責任者である軍人ノースフィールドのオフィスには、ドイツ側のスパイが送り込まれ、援軍が出発する日時とルートの情報を得ようとしていた。一方、日本のスパイであるナラ・ナラは、ノースフィールドがドイツ側に情報を流しているのではないかという疑いから、調査を開始する。

 第一次大戦が行われていた当時のスパイ映画である。といっても、プロパガンダ色はそれほど濃くはない。第一次大戦ではアメリカと日本は同じ側で戦っていたことから、日本人の描かれ方はそれほど否定的ではない。だが、映画が大詰めとなったところで、早川雪洲演じるナラ・ナラ(変な名前だ)が強制的にスパイの手助けをされていた女性キティへの欲望を丸出しにする。しかも、キティの弱みに付け込んで、日本に一緒に帰れば見逃してやるという卑劣なやり方で迫る。

 早川雪洲といえば「チート」(1915)が有名である。「チート」でも早川は女性の弱みを握って迫るという卑劣な役柄だった。「チート」で人気が高まった早川には、この作品のような役柄が求められていたのだろうか。また、同じ側で戦っていたとはいえ、当時のアメリカ人にとって日本人はあまり好かれていなかったのかもしれないとも思わせる。それほど唐突に、ナラ・ナラは卑劣になる。

 ドイツのスパイは完全に悪役に描かれているものの、どこか魅力も感じられるように描かれている。スパイのボスであるスミスには、どこか人を引き付ける魅力があるように描かれている(だからこそ、スパイとして内部にまで入り込める)。しかし、日本人側は好意的に描かれているにも関わらず、どこか無機質な印象を受ける。それは、ナラ・ナラが父親からもらった日本刀を、忠誠心の象徴として描いて見せても変わらない。むしろ、白々しく感じられる。

 アメリカ、日本、ドイツという三者が繰り広げるスパイ合戦の話はかなり複雑に入り組んでいく。脚本は、複雑なストーリーをうまく捌き、エンターテインメントとして楽しめるようになっている。

 この映画は、「チート」以外のサイレント期の早川雪洲の演技を見ることができるというほかにも、当時のアメリカ映画が描く日本像(戦争で味方となっているものの、心から信頼していない感覚)が感じられた。

World War 1 Films of Silent Era [VHS] [Import]

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