映画評「THE HOBO」

 製作キング・ビー・ステュディオズ 出演ビリー・ウェスト

 1人のホーボーが、ある駅へとやって来る。そこで、ホーボーはレストランの職を得て、そこの主人の娘に恋をする。

 当時多く登場したというチャールズ・チャップリンの模倣者の1人であり、模倣者の中でも最も人気が高かったというビリー・ウェストが主演している。

 ウェストのチャップリンの真似は本当に似ている。見た目からちょっとした動きまで、一見すると気づかないくらいだ。加えて、チャップリン映画の代名詞ともいえるペーソスも醸し出そうという努力が、この作品には見られる。

 それなりに楽しい作品だし、短編時代のチャップリン作品の中の失敗作とも言える作品よりは、何倍も面白い。だが、どうしてもチャップリンの上質の短編と比べると何かが足りない。それは、チャップリンが時折見せてくれる見た目や動きを超えた「芸」でもあるし、ちょっとした瞬間に感じさせるような胸を締めつけるようなせつなさだったりする。

 この作品で最も印象に残ったのは、若き日のオリヴァー・ハーディだ。ウェスト演じるホーボーの恋のライバルとして登場するハーディは、映画の冒頭で食って食って食いまくる。そのとてつもない食べっぷりは見事だ。

 ハーディが強く印象に残っていることもチャップリン映画とは少し違う点だろう。チャップリンならば、他の登場人物が自分より印象に残るような映画は作らない。