映画評「WON BY A FOWL」

 製作国アメリ
 製作キーストン・フィルム・カンパニー トライアングル・フィルム・コーポレーション
 配給トライアングル・ディストリビューティング・コーポレーション

 レストランの主人夫婦と、そこに勤めるコック夫婦。さらに1人の浮浪者が加わり、ドタバタが繰り広げられる。

 ストーリーは、夫婦間の痴話喧嘩という、当時のスラップスティック・コメディではおなじみのものだが、登場人物が多いために複雑化している。かつて15分程度の短編コメディで一世を風靡したキーストン社も、上映時間の長尺化(この作品は30分弱)の流れを、ストーリーの複雑さでカバーしようとしているかのようだ。だが、ストーリーを楽しめるというほどでもなく、かといってスラップスティックも他の作品でも見たようなもので工夫に欠ける。

 それ以上に深刻なのは、登場人物たちに個性がないことだ。かつて、ロスコー・アーバックルやチャールズ・チャップリンなどを擁したキーストン社だが、この頃にはスターになった彼らの多くは独立してしまい、映画からは個性が感じられなくなってしまっている。