ハロルド・ロイド作品「猛進結婚」

原題「THE NON-STOP KID」 製作国アメリ
ローリン・フィルムス製作 パテ・エクスチェンジ配給 主演ハロルド・ロイド

 愛し合う女性と結婚したいロイドだが、女性の父親は教授と結婚させようとしている。そこでロイドは、教授に成りすましてパーティーに参加するが、やがて本物の教授が現れて、女性を連れて逃げ出してしまう。

 「猛進結婚」のロイドは、他でも指摘されていることがだが、チャップリンの初期の短編を思わせる。他の人物に成りすますという行為は、チャップリン映画に繰り返し用いられるものだ。また、隣に座る人のスープに砂糖を入れてしまい、隣の人はロイドのコーヒーに塩を入れてしまい、いざ飲んでびっくりするというギャグもチャップリン的だし、リアクションもまたチャップリン的だ。しまいには、変装でチョビ髭まで付けるから、ますますチャップリンっぽく見えてきてしまう。

 だが、この作品ではおもしろいギャグがある。どうやら成りすました教授は歌が得意らしく、ロイドは歌わざるを得ないハメになる。しかし、ロイドは歌が苦手。そこで、レコードをかけて口パクでごまかすのだ。このギャグはマルクス兄弟の「ご冗談でショ」でも用いられているのだという。

 1巻もので10分程度の「猛進結婚」は、取り立てて面白い作品ではないと思う。ロイドが開花するのはまだ先のこととなる。